市場を壊しては自由化が壊れる

 冒頭で触れたように監視委員会は、こうした前日スポット市場と当日の全国需給の間に生じる不整合の原因を調査する方針を固めた。適切な取引が行われているのかどうかにメスが入ることになったのは画期的だ。

 監視委員会は卸電力取引のモニタリングを継続的に行い、都度、モニタリング結果を報告してきた。だが、これまでは残念ながら売り玉不足を強く指摘し、積極的に対応してきたとは言えない。そもそも監視委員会も有識者会議のメンバーも、全面自由化以降の売り玉不足の状況に強い問題意識を持てていなかったのではないか。

 その意味では、遅きに失した嫌いがないでもない。それでも、ここにきて監視委員会が切り込む姿勢を見せ始めたのは、7月の高騰などを市場の異常を告げるシグナルとして受け止めたことが大きかったはずだ。

 卸電力取引市場はシグナル機能を有する社会の公器だ。

 広域機関も従来から市場のシグナルにもっと気を配り、その意味するところに目を凝らしていれば、供給力確保を巡る電力取引に対しても、もっと深い洞察を持てたのかもしれない。仮に供給力確保に関する監視や規制の強化に一理あったとしても、市場を壊してしまっては自由化も壊れてしまう。

 市場参加者が進んで市場を利用するには、常に信頼できる売買が行われる状況が担保されていなければならない。電力の場合、その域にはまだ距離があるものの、市場関係者はそこを目指して市場と対峙していくことが求められる。その先に、多くの需要家や国民が期待する自由化の果実もあるはずだ。

 一部の事業者や関係者の安易な判断や行動が、健全な市場の成長を阻害することがあってはならない。そのことは電力市場に関わるすべての関係者に問われている。

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