今年も電力市場価格は高騰し、7月下旬には100円/kWhの史上最高値を記録した。冷や汗をかいた新電力経営者は少なくないだろう。他方、大手電力も入り混じった価格競争は熾烈を極め、「安く仕入れて高く売る」というシンプルな手法は成立しにくい状況にある。
新電力事業は、ごく短期間で売上高を100億円、200億円とすることが可能な魅力的な事業だ。ただし、自社の特性に合ったビジネスモデルをきちんと作らなければ、あっという間に苦境に追い込まれてしまう。
では、足元の事業を立て直し、新電力事業を成長へ向かわせるにはどうしたら良いのか。新電力エフビットコミュニケーションズ(京都市)の売上高を、わずか1年で倍増させ、収益性を向上させた柏崎和久前社長に聞いた。(聞き手は山根 小雪=日経エネルギーNext)
――わずか1年でエフビットを新電力100位近くから30位台にまで引っ張り上げました。この急成長をどうやって実現したのですか。
エフビットが置かれていた事業環境を理解し、従業員の意見を丹念に聞いて課題や強みを整理し、事業の目的を明確にしたうえで、事業計画を作り直しました。実行したのは従業員たちです。よくやってくれました。
少し説明すると、まずメガソーラー事業を立て直し、新電力事業にキャッシュが回る体制を作りました。それまでエフビットの本業は通信で、電気は素人集団でしたから、商品をシンプルにして、営業部隊と需給管理部隊を連携させながら、ベンチマークを設けてスピード重視で営業攻勢をかけたのです。加えて、強みを生かした「武器」を持つよう説き続けました。
新電力経営にはセオリーがあります。エフビットの立て直しを手がけた時期と今では、事業環境が変わっていますが、やるべきことをきちんとやれば、新電力事業は成長軌道を描き始めますよ。