不祥事が起きた発電事業、継続の判断は年内にも

――3月22日に発表した中期経営計画の中に、「電源開発事業」についての記載があります。村上前社長は、「不適切会計問題の原因となった電源開発事業は建設中の発電所が完成したら売却する」と発言していました。

小林社長 電源開発事業については、今一度、整理しているところです。確かに発電所が仕上がったら売却するということで銀行と話をして融資を受けています。ただ、エナリスは安定供給可能な自前の電源をほとんど持っていません。今後のことを考えると、そのまま保有し続けることも選択肢の1つと考え始めています。2017年のうちには整理することになると思います。

 中期経営計画では、事業セグメントの考え方を一新する方針を示しました。今後、電源開発という事業区分は辞めます。

 これまでエナリスは事業セグメントを「電源開発」「卸取引」「需給管理」「電力小売」の4つに分類していました。新生エナリスは、お客様ごとに「法人需要家向けサービス」と「新電力向けサービス」の2セグメントで展開していきます。

 お客さまに電力サービスを提供するためには、何らかの電源を調達しなければなりません。自社電源を保有し続けるのが良いのかどうか、こうした観点から検討しています。今後も新規の電源開発を進めていくという発想はありません。

 中期経営計画の指標には、従来からの電源開発を含む4セグメントでの数字と、新たなセグメントに基づく説明を併記しています。あくまで便宜的に、従来からのセグメント表記を残しています。

 というのも、事業区分を変える際には、過去3年分の数字を再計算して示す必要があります。当社はマーケットへの説明責任がありますし、アナリストは数字の継続性を大切にしているからです。ただ、人数も少ない小さな会社です。オーバーヘッドの仕事は極力減らしたいのです。ですから、会計の仕組みはまだ変えていません。

――中期経営計画の発表後には、株価が低下しました。「かつてのエナリスのチャレンジングなビジネススタイルは戻ってきていない」という印象を与えたのではありませんか。マーケットの期待感に応えきれていない印象があります。

小林社長 株価は予想以上に下がってしまって、正直、落ち込むところではあります。実は、エナリスが中期経営計画を作るのは今回が初めて。時間切れの面もあり、中途半端で不十分なところもあるけれど、エナリスの実情を説明させていただく、というのが今回の計画なのです。

 加えて、今回の中期経営計画には、「既存ビジネスの中で伸ばしていけるものを伸ばす」という側面しか書き込んでいません。新しい部分はゼロなんです。「新しいことにチャンレンジしていない」とマーケットが受け止めるのは、しょうがないと思います。

 やっとなんです。3月24日の株主総会後に、ようやく経営監視委員会が解散しました。ようやく「これでいい」と委員長の日野正晴先生(弁護士、元金融監督庁長官)に言っていただきました。いよいよこれからだなと思っています。

ごはんを食べていくため、まずは既存ビジネスから

 今、エナリスの自己資本比率は10%ちょっと。この2年で不良資産を相当整理して、体力が落ちています。新しいことに取り組みたいけれど、まずはごはんを食べていくために、既存ビジネスをしっかり運営していかないと会社として継続できません。電気はインフラですから、サービスを途中で止めるわけにもいきません。会社をきちんと継続させるというのが最初にあって、その上でエナリスらしさを出していきたいと思っています。

 社長に就任してすぐに全社員を集めたパーティーをやりました。そこで私が最初に言ったのが、「なんかベンチャーっぽくないね」。この2年、社員たちは内部統制やコンプライアンスでガチガチになっていました。大企業みたいに、「これやってもいいのかな」「ダメなんじゃないかな」と。もう1回、“エナリスらしさ”を取り戻さないといけません。そのためにも会社がしっかりしていないといけない。

――エナリス・ショックの2年の間に、既存顧客を失ったのではありませんか。

小林社長 私自身、そう思っていました。この2年でボロボロに顧客が抜けてしまったのではないかと。ところが、実はそうでもないんです。エナリスは中小企業ですから債権のとりっぱぐれなどもあるだろうと思っていたのですが、督促することもほとんどありません。あまりに良いお客様がいるので、大事にしないと罰が当たります。今一度、お客様に向き合っていきたいと思っています。

 これは株主も同じです。株主の皆様にも見捨てられているのかなと思ったら、これもそうでもなくて。すごく良いお客様と株主に恵まれていると感じています。

 電気料金だけで比較されてしまうと、規模が大きな事業者にかないません。料金比較だけの競争に陥らないようにどうやっていくのか、法人需要家へのアプローチの全体感です。例えば、蓄電池を置いたり、LEDへの切り替えをお手伝いしたり。電気料金を下げるだけでは弱いので、省電力でも下げる。2段階で下げて、浮いたお金でLEDに投資しませんかと。真正面から戦わない方法でやっていきたい。