そして、もう1つの大きなハードルが「保安業務」である。

 ガス小売事業者には、家庭などで使用する給湯器やコンロなどガス機器の定期的な安全点検が義務付けられている。資格を持つ保安作業者の確保や保安業務の外部への委託など体制整備の面でも障壁は高い。保安業務は、LP(液化石油)ガス事業で関東エリアに保安ネットワークを張り巡らせるニチガスが、提携ガス小売事業者に代わって実施する。

 提携先のガス小売事業者が、顧客からガス器具の交換などの相談を受けた際などにも、ニチガスが代わってニチガスの販売価格と同じ価格でガス器具を販売する。売り上げの一部は「紹介手数料」として提携先のガス小売事業者に還元する仕組みもつくった。

 東電EPとニチガスの経営資源を持ち寄り、文字通り、都市ガス事業に必要な資源や業務をフルパッケージで提供するのが東京エナジーアライアンスだ。

東電EPとニチガスがそれぞれの経営資源を提供
東電EPとニチガスがそれぞれの経営資源を提供
東京エナジーアライアンスの業務概要
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都市ガス事業は儲けが出ない?

 東京エナジーアライアンスの吉田圭成社長は「提携先に(業種などの)条件はない」と強調する。イーレックスのように電気で東電EPと競合する新電力とも提携を進める。8月の設立以降、すでに「20件を上回る問い合わせがあった」(吉田社長)という。

 ただ、今のところ提携相手はイーレックス1社のみだ。アライアンスを利用すれば、手軽に都市ガス参入が実現しそうなものだが、実態はどうなのか。この先、提携は広がるのだろうか。

 イーレックスが提携の検討を進めるうえでネックになったのは都市ガス事業の採算性だった。「東京エナジーアライアンスに費用を支払うと都市ガス事業は利益がほとんど残らない」(イーレックス幹部)ためだ。

 この点は、東京エナジーアライアンスの吉田社長も「都市ガス事業単体での参入は容易ではないだろう」と採算性の低さを認める。

 現在、サービスの提供は東京ガスの導管で都市ガス供給が可能な東ガスエリアに限られる。「東ガスエリアは託送料金が他のエリアに比べて割高なこともあり、東電EPの都市ガス事業も利幅は非常に薄い」(吉田社長)というのだ。

 利益を出しにくい実態は、提携を検討する事業者から見れば「アライアンスのサービスはコスト高」と映る。提携の判断では、他の本業などとの相乗効果をいかに出せるかがポイントになりそうだ。イーレックスはガスとのセット販売による電気事業のテコ入れと位置づけて提携に踏み切った。