楽天が10月1日にサービスを開始した「楽天でんき」が好調だ。

 具体的な契約者数については明らかにしていない。だが、「正直なところ、予想をはるかに上回るペースで伸びている」と楽天エネルギー事業部営業課の須藤啓シニアマネージャーは頬を緩める。

 楽天でんきは基本料金ゼロ円で、エリアごとに定めた従量料金を使った分だけ支払う。非常にシンプルな電力サービスだ。しかも、新電力の参入が難しい沖縄を含めた全国で展開している。

 契約の伸びを後押ししているのが、契約時に付与する楽天ポイントだ。サービス開始当初はキャンペーンとして3000ポイントを付与。現在も2000ポイントを付与している(2018年12月15日時点)。約9000万のアカウント数を誇る楽天が、ポイント戦略を駆使した「楽天経済圏」に本格的に電気を取り込んだと言えそうだ。

 電力全面自由化前から様々なエネルギー関連サービスを展開してきた楽天。電力小売りに関しても、かねて様々なサービス展開していた。では、今回新たに始めた「楽天でんき」とは何なのか。謎解きをする前に、楽天のエネルギー事業について整理しておこう。

自ら電気事業はやらないと言っていたが・・・

 楽天は東日本大震災以降、徐々にエネルギー事業を拡大してきた。再エネから動き始め、2012年7月に太陽光発電システム販売の「楽天ソーラー」を開始。2013年1月には、太陽光の販売・施工を得意とする日本エコシステムの株式を取得するなど、一時は再エネで積極的な展開を見せた(2014年4月に日本コムシスに株式を売却、楽天ソーラーは2015年に終了)。

 2013年7月には、洸陽電機(神戸市、現、シン・エナジー)およびグローバルエンジニアリング(福岡県古賀市)と提携。「楽天トラベル」と契約する旅館などの施設向けにエネルギーソリューションを提供すると発表した。この頃から、大手新電力エネット(東京都港区)など、複数の座組でデマンドレスポンス事業なども展開している。

 2014年10月には、グローバルエンジニアリングや東光高岳との共同出資によりエネルギー需要開発に関する有限責任事業組合(LLP)を設立。同年10月には、丸紅とも簡易HEMS開発を目的とした協業を発表した。

 法人向けの電力小売りに楽天が関わりを持ち始めたのはこの頃だ。グローバルエンジニアリングの取次として、旅館など楽天の顧客を中心に営業を展開した。

 そして電力全面自由化の足音が近づいてくると少しずつ、表舞台に姿を見せ始める。2015年8月には丸紅と低圧向け電力小売りで業務提携を締結した。

 この時、会見に登壇した楽天の菅原雄一郎・エネルギー事業長(当時)は、「ベンチャーの参入で通信業界は変わった。寡占化した市場は、ベンチャーが入っていく意義がある」と語った。菅原氏の言葉はNTTグループに対抗して誕生した第二電電をイメージしたものだった。

 この提携が結実する形で、2016年4月に楽天は丸紅の取次として、低圧向け電力サービス「まちでんき」を開始した。

 当時、楽天の菅原氏は日経エネルギーNextの取材に対して、「楽天は電力事業者を目指さない。電力はあくまで楽天経済圏の商材の1つ」と話していた。自社で小売電気事業者のライセンスは取得せず、複数の新電力の仲介役を務めるという意味だ。実際、法人向けはグローバルエンジニアリング、家庭向けは丸紅の取次を担っていた。