実際の必要量は「需要曲線」として広域機関が容量市場の取引の都度定める決まりで、現時点の需要見通しがそのまま当てはまるわけではない。だが、予測できる仮定に基づけば、国内で立ち上がる容量市場を通して動く金額は年間7000億円規模になる可能性がある。これが毎年、発電事業者が受け取る総額であり、小売電気事業者が支払う総額に相当する。かなり大きな金額になりそうなことがわかる。

 あとは個別の事業者にどう振り分けるかだ。配分方法はまだ固まっていないが、小売電気事業者への振り分け方の1つの有力な案として、エリアごとの年間のピーク需要の時間帯における個別事業者の需要量(kW)の比率で割り振る案が挙がっている。エリアごとに必要になる電源の確保量はエリアのピーク需要で決まるという考え方だ。

販売量1kWh当たり1.6~2.4円の負担

 東京エリアに当てはめれば、2015年度のピーク需要は5587万kWだった。この年の大手電力10社のピーク需要の単純合計は1億6718万kWだったので、東京エリアの小売りに対しては約2340億円の負担が割り当てられることになる[約7000億円×(5587万kW/1億6718万kW)]。東京エリアでピーク需要時に仮に10万kWの需要を持っていた小売電気事業者は、年間で約4億2000万円を負担する計算になる[2340億円×(10万kW/5587万kW)]。

 売り上げに占める負担額をわかりやすく表現するため、販売電力量1kWh当たりの負担に置き換えて見てみると、負荷率30%の場合で1.6円/kWh[4億2000万円/(10万kW×0.3×8760時間)]、負荷率20%で2.4円となる(*1年は8760時間)。新電力の場合、負荷率は20~30%というケースが多いと見られるが、上記の配分方法を前提としたとき、負荷率が小さい新電力ほど販売電力量当たりの負担額は大きくなる。

 1kWh当たり2円前後の負担をどう見るか。小売電気事業者の収益構造は様々だが、仮に1kWh当たりの電気料金の平均単価が30円で、そのうち託送料金が3分の1を占めるとしたら、kW価値の支払いは収入の1割程度を占める可能性がある。

 以上はあくまで諸条件を仮置きした試算に過ぎない。1kW当たりの負担が1円程度で済む場合もあるだろう。それでも、薄利と言われる電気事業にあって、他の諸々の経費を差し引けば、赤字に陥る新電力が出ないとは言えない水準ではなかろうか。

 ある老舗新電力の幹部は「自社への影響が一番心配なのはもちろんだが、他の新電力への影響がどうなるかも心配している。もし、新電力の倒産が相次ぐことにでもなれば、新電力への信頼がぐらつき、自社の事業にも跳ね返ってくる」と不安を隠さない。

 容量市場は発電事業者に収入をもたらし、小売電気事業者に支出を強いる。自前の電源を保有する新電力の場合も、多くは自社の需要が自社の発電量を上回るため、支出の方が多くなる。自社電源を持たず、市場から電力を調達している割合が大きい新電力ほど負担は大きい。逆に予備力を含めて自社需要を上回る電源を持つ大手電力は収入の方が多くなる。