「大手電力といえば、再生可能エネルギーを評価しておらず、新電力をどうやって取り込むのかということを考えていると思っていた。だが、中部電は違った。再エネに前向きな会社だと感じたので協業を決めた」

 新電力ベンチャーLooop(東京都台東区)の中村創一郎社長は9月28日、中部電力と資本業務提携を発表する会見の席上で、こう語った。

Looopと中部電力は資本業務提携を発表
Looopと中部電力は資本業務提携を発表
写真右はLooop中村社長、左は中部電力の大谷執行役員

 中部電はLooopが実施した第三者割当増資を引き受け、10.25%分を出資。両社は今後、再生可能エネルギーを活用したサービス開発を共同で手がけるという。出資金額については明らかにしていない。

 昨今、大手電力と手を結ぶ新電力は後を絶たない。今回のLooopや東急パワーサプライのように大手電力から出資を受ける場合もあれば、電源の卸供給を受けるケースもある。最近では、大手電力の取次として営業を担う新電力も増加している。

 大手電力による高圧部門の値引き攻勢や、日本卸電力取引所(JEPX)の価格変動による経営へのダメージが深刻化しているためだろう。こうした状況に、「大手電力と新電力の戦いではなく、大手電力同士の代理戦争に新電力が取り込まれている」という見方も根強い。

 Looopの場合、既に今年春から関西エリアの高圧部門では関西電力の取次に、8月から首都圏の高圧部門で中部電の取次となった。(「Looopが関電の取次に、大手が新電力を飲み込み始めた」および「新電力Looopが今度は中部電取次に、真意を聞く」を参照のこと)

「さらなる成長のためには資金が必要」

 今回の中部電からの出資受け入れが報じられると、「Looopは中部電に身売りしたのか」といった見方も漏れ伝わってきた。2017年度3月期決算の公表が遅れていたことが、その背景にあったようだ。だが、中村社長はこれを否定する。

 「相手のある話なので詳細は明かせないが、経営の独立はかなり重要視した。“かなり”という言葉から察してほしい。中部電の出資を受け入れてなお、70%以上の株式を私(中村社長)およびLooopのメンバーで保有している」

 決算の公表が遅れていたのは、「電気事業の収益悪化の影響ではない」(中村社長)と説明する。メガソーラー開発の報酬計上時期で監査法人との認識の相違があり整理に時間を要したこと、太陽光のEPC事業において不動産販売の売上計上タイミングの整理に時間がかかったことが原因だという。

 そのうえで、Looopは今、さらなる成長のために資金が必要なフェーズにあり、戦略パートナーとして大手電力が最適だったと明かす。

 「電気事業に精通した大手電力ならば、当社の価値を高く評価してもらえる。大手電力以外なら、大手ガスや石油元売り、中東産油国の石油会社なども候補になりえた。中部電とは高圧部門の取次でのお付き合いから始まったが、大手電力の中では新しいことに積極的で企業規模の大小問わず、パートナーシップを迅速に取るスタンス。この点は当社とウマがあった」

 電力小売りは、販売電力量が大きくなればなるほど、運営資金が必要になる特性がある。電気料金を需要家から受け取るのは、電源調達などの支払い後、2カ月ほど後になるためだ。中村社長は、「電力小売りを伸ばすためにマーケティングやシステム開発などの成長資金に使いたい」と明かす。

 また、発電事業にもさらなる投資をする計画だ。太陽光発電事業はLooopの祖業。東日大震災直後に創業し、FIT(固定価格買取制度)によるブームに乗って、これまでに大小2000カ所に設置してきた。今後は、「大型の発電所建設だけでなく、小型の発電所を自社資金で付けていくようなビジネスモデル(第三者保有モデルなど)に投資していきたい」(中村社長)という。