電力自由化を商機と捉えて新規参入した大東建託グループに異変が起きている。グループの新電力、大東エナジー(東京都港区)が2016年5月から展開している電力サービス「いい部屋でんき」の受け付けを中止すると8月31日に発表したのだ。

 大東エナジーは家庭向けなど低圧分野の供給量では、新電力でトップ10に入る。2017年6月時点の契約数は26万件と、新規参入組の中でも大きな存在感を放ってきた。

 実は、大東エナジーに異変が現れたのは、今春にさかのぼる。4月17日に「いい部屋でんき」新規申込み受付の一時停止についてというプレスリリースを出した。

 その時は、「想定を上回る多くの申し込みをいただき、事務処理が滞る事態が発生している。新たなに入居する際の新規申し込み受付をいったん休止し、関係する業務フローを整理して体制を整えたうえで再開する」(大東エナジー)と一時停止の理由を説明していた。

契約獲得率は新規入居世帯の約7割

 大東建託は、賃貸物件の管理戸数で全国トップを誇る。全国で100万戸規模の物件を管理しており、電力サービスはこれら管理物件の入居者に対して提供している。

 大東エナジーのビジネスモデルは、「日経エネルギーNext」2016年10月号記事「戦略研究・大東エナジー」で紹介している。詳しくは当該記事をご覧いただきたいが、大東エナジーの販売戦略は実にシンプルなものだ。(今回のWeb記事に合わせて、過去記事もWebで公開することいたしました)。

 不動産仲介業者が大東建託グループの管理物件の入居希望者と賃貸契約を交わす際に、「いい部屋でんき」のパンフレットを見せて、「大手電力会社より必ずお得になる」と説明する。これだけで、契約獲得率は新規入居世帯の約7割に上った。

 ただ、入居希望者からの申込受付窓口が複数あったことが、4月の新規申し込み受け付けの一時停止につながった。改めて一時停止の理由を大東エナジーに問い合わせると、次のような回答が返ってきた。

 「受付窓口が『大東建託の賃貸営業課』であったり、『大東建託パートナーズの営業所』であったり『ネットで直接』であったりと、さまざまな場所から、いろいろな手段で行われたため、業務が人手に依存することも多く、特に引っ越しの多い3月には事務処理が追いつかない結果となってしまった。一部のお客様にご迷惑をおかけしたことを深く反省するとともに、このまま再開しても同じ事態を招きかねないので受付方法の整理検討を行っている」