全国各地で地域新電力が続々と立ち上がっている。狙いは、電気料金として地域から流れ出るお金を、地域の中で環流させること。だが、苦境にあえぐ事業者は少なくない。そんな中、地に足の着いた事業運営で着実に収益を上げているのが北九州パワーだ。

苦境にあえぐ新電力が少なくない中、北九州パワーは着実に成長している。写真左は北九州市役所
苦境にあえぐ新電力が少なくない中、北九州パワーは着実に成長している。写真左は北九州市役所

 北九州パワーは、2015年12月に北九州市と地元企業が出資して設立した地域新電力だ。2016年4月に営業を開始し、ちょうど2年が経った。

 2016年度の売上高は10億3800万円、経常利益は1億7600万円。そして、2年目の2017年度は、売上高がほぼ倍増の18億6400万円、経常利益は8400万円だった。

 北九州市環境局地域エネルギー推進課の石田哲也課長は、「今年の1~2月の猛烈な市場価格の高騰で利益が目減りしたが、それでもしっかり収益を上げることができた。着実な事業運営ができている手応えがある」と言う。しかも、「初年度に1人、2年目でもう1人、プロパーの従業員を雇用することができた」。

 なぜ北九州パワーは、2年で20億円規模の事業にまで成長できたのか。市場価格の変動に耐え、収益を上げ続け、雇用を増やすことができたのか。

 北九州パワーの事業運営を紐解いてみると、地域新電力が成功するための条件が揃っていた。

政令市が電源と需要を随意契約にする凄さ

 成功の条件その1は「自治体の本気」だ。

 北九州パワーは市が発案し、自ら約25%を出資している。さらに、事業開始に合わせて、市の公共施設の大半で、北九州パワーの電力を購入するよう契約を変更。さらに、市が保有する廃棄物発電(ごみ発電)の売電先を北九州パワーに切り替えた。いずれも従来は入札によって契約先を決めていた。

 一定規模の需要と、安価な電源を持って事業をスタートさせれば、初年度からそれなりの売上高と収益が期待できる。安定したスタートを切ることができることこそ、地域新電力の強みであり、自治体の本気度が見えるポイントでもある。

 地域新電力の設立支援を手がけるあるコンサルタントは、「小規模な自治体であれば首長の意向で需要や電源を地域新電力に随意契約で切り替えることは、さほど難しくない。だが、政令指定都市である北九州市がそこまで踏み込んだことに本当に驚いた。政令市では不可能だと思っていた」と舌を巻く。

 実際、「財政部局や市議会への説得は、簡単なものではなかった」と石田課長は振り返る。機関を安易に地域新電力を優遇するようなことがあれば、民業圧迫だと批判されかねない。オンブズマン制度もある。都道府県や政令指定都市は政府調達協定(WTO協定)による一般競争入札を行う必要もある。こうしたルールに反することなく、地方創生に向けた自治体の取り組みとして正々堂々とスタート切るために、何度も議論を重ね、仕組みを作っていった。