電源確保の不平等が電力ビジネスの競争を阻害している

 新電力と大手電力が公正な競争をするためには、電源確保の不平等を是正していくことが不可避だ。大手電力において、小売部門は長年、圧倒的な権力を有してきた。だからこそ、大手電力の小売部門は依然として安価な電源を調達し、新電力には太刀打ちできない低価格で販売している。

 国内最大の発電会社となったJERAが、両親会社の小売部門との軛を断ち切り、「公正な電力取引によって、高く買ってくれる人に売る」というビジネススタイルを取るようになれば、日本の電力市場は多いに活性化するだろう。

 JERA関係者からは、「今後は市場対応型のビジネスモデルにしていく」という言葉が聞こえてくる。東電と中部電の発電部門にとって、自社小売りとの強固な関係から、ある意味解放されるJERAへの統合は商機になるはずだ。JERAがより自律的に経営を進めることに期待したい。

 燃調調達の規模とトレーディング機能を駆使し、日本に安価な燃料を持ち込む。さらに、老朽火力のリプレースや廃止を進め、発電設備自体の競争力を高める。こうして発電した安価な電力を、親会社の小売部門以外の小売事業者にもフェアに供給する。JERAがこうした過程を経ることで、大手電力以外の事業者の競争力が高まれば、これまでの電力業界からは生まれなかった新たなサービスや魅力的な料金が生まれるだろう。もちろん、国内への安定供給という責務は変わらず果たされる。

 積年の課題であった大手電力による電源の独占に、風穴を空けることができるかどうか。また、縮小する日本のインフラ産業で新たなビジネスモデルが花開くのかどうか。完全統合を迎えるJERAの行方は、日本の電力ビジネスの今後を占う試金石となりそうだ。

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