「ショックだった」託送料金の水準

 東電EPとニチガスがこうした構想に行き着いた背景には東ガスの手強さがある。東ガスは電力自由化から1年足らずで電気の需要家を64万軒獲得した(1月末時点)。家庭向けでは他の新電力を大きく引き離し、圧倒的な存在感を放つ。

 東ガスの電力小売りは、ガス機器販売や保安を手掛ける地域のサービス網であるライフバルの従業員による訪問販売が奏功したとされる。「ライフバルの営業網としての強さが実証された」と東電EP幹部もその営業力は認めるところだ。自由化される都市ガスの営業では、その東ガスの牙城を崩さなければならない。対抗上、東電EP陣営にとって営業力の強化は不可避だ。

 もう1つ、東電EP陣営にとって想定外だったのは、2016年末に決まった託送料金(ガス導管の利用料)の水準が予想より高かったことだ。ある東電EP幹部は「正直言って、ショックだった」とうつむく。東ガスの都市ガス料金は全国でも安いといわれる。ガス料金に含まれる託送料金の割合が高ければ、純粋なガス小売りの粗利は薄くなる。対抗する東電EP陣営も利幅の圧縮は避けられない。この収益構造で戦うには、東電EP陣営として販売量を早期に、効率的に増やす以外にないというのが東電EPとニチガスの結論だ。それだけに「本気で仲間を増やしていく」とニチガス幹部は語気を強める。

 東電EPとニチガスの都市ガス事業プラットフォーム構想は、異業種から都市ガス参入を考える事業者には大きなチャンスにもなり得る。都市ガス自由化の行方は、エネルギー事業者の合従連衡の進展にかかっているとも言えそうだ。

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