広域機関がとりまとめた最新の供給計画が波紋を呼んでいる。発電設備が不足し、2021年にも安定供給の水準を割り込むおそれがあるというのだ。背景に予想を超える休廃止電源の急速な増加がある。

 「容量市場が始まる2024年度を待たずに需給ひっ迫することが現実的な問題として懸念される」。

 3月30日に電力広域的運営推進機関が公表した「平成30年度供給計画のとりまとめ」に、このような所見が盛り込まれた。向こう6年の間に電源(発電設備)が足りなくなるおそれがあると指摘した。

 東日本大震災直後こそ大いに心配された電力不足だが、原子力発電所稼働ゼロの状態を乗り切り、徐々にだが今では再稼働も始まっている。加えて、ここ1~2年は人口減少や省電力の進展などで電力需要の中長期的な減少傾向も顕在化し始めている。なぜ、ここにきて電源が不足することになるのか。

2021年度は安定供給ギリギリの水準

 容量市場は安定供給確保の観点から、需要を満たす電源(発電設備)の維持や建設を促す費用(kW価値)を、小売電気事業者から回収する目的で導入が決まった新市場だ。だが、あくまで将来への備えと見ていた関係者も少なくない。容量市場立ち上げ前にも電源不足を招くおそれがあるとする今回の広域機関の見解は意外なものといっていいだろう。

 供給計画とは、向こう10年に渡って年度ごとの電力需給の見通しを推計したものだ。全国の発電事業者や小売電気事業者が毎年、電気事業法に基づいて国に届け出る電源の開発計画などを集計している。今回公表されたのは、2018年度時点で見込まれる2027年度までの見通しだ。要は設備能力の面から中長期の安定供給を、大手電力や新電力の計画から点検するのが目的である。

 供給計画では供給力(kW)が想定需要をどれだけ上回っているかを「予備率」で表す(予備率=[供給力―需要]/需要×100)。年間の最大需要は最も気温が高くなる8月で太陽光発電が下火になるおおむね17時(エリアによりやや異なる)と想定する。下のグラフは、2027年度までのピーク時の予備率を予測したものだ。

2021年度前後で落ち込む予備率
2021年度前後で落ち込む予備率
中長期の需給バランス見通し(8月17時)(出所:電力広域的運営推進機関)
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 すると年間ピーク時の予備率は年度ごとに変化しているが、2021年が深い谷になっており、このとき予備率は8.1%まで下がる。

 エリアごとに最終的な需給調整を担う全国の一般送配電事業者(大手電力の送配電部門)は、想定外の需要の伸びや電源の故障に備える分を含めて想定需要の7%に相当する調整力の確保が義務付けられている。そして、小売電気事業者は自社分の需給調整に、需要の1%程度の予備的な供給力を確保することが求められている。つまり、現行の評価法では合わせて「予備率8%」が安定供給の最低基準と位置づけられている。

 ということは、2021年の8.1%は安定供給をぎりぎり確保した状態だということになる。

 とはいえ、向こう10年は一度も8%を下回ることはなく、グラフからは安定供給を保ち続けられるように読める。それでも広域機関が需給ひっ迫を懸念しているのは、「電源の休廃止が加速している実態がある」(広域機関計画部)ためだ。