ロボットを“認知症計”に

 (1)の会話を使った認知機能検査については、NTTデータ関西などのグループ、慶應義塾大学などのグループがそれぞれ研究開発を進めている。このうち、NTTデータ関西と大阪市立大学、大阪市立弘済院附属病院が手掛けているのが、コミュニケーションロボットとの会話内容から認知機能の評価を行うシステムである。2017年4月に実証実験を開始した。

コミュニケーションロボットを使った実証実験の概要(画像提供:NTTデータ関西)
コミュニケーションロボットを使った実証実験の概要(画像提供:NTTデータ関西)
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クラウドロボティクス基盤を使用した認知機能評価の概要(画像提供:NTTデータ関西)
クラウドロボティクス基盤を使用した認知機能評価の概要(画像提供:NTTデータ関西)
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 コミュニケーションロボット「Sota」と被験者が会話をし、その内容をNTTデータのクラウドロボティクス基盤で統合的に解析することで認知機能を評価する。実証実験では、コミュニケーションロボットによる判断と医師の診断にどのくらい差が生じるかを検証している。

 コミュニケーションロボットを活用するのには、理由がある。「医師の前では平然を装う場合がある」(NTTデータ関西 法人システム事業部 第三法人システム担当 課長代理の原田慎氏)からだ。ロボットが相手なら、平然を装うような演技をせずに、出せなかった感情を出せるのではないかと考えたのだ。

 現在までに、健常者と認知機能に障害のある患者を対象に、総勢30人に実証を行った。ロボットの判断と医師の診断には「近しいものがあり、診断支援に使える可能性がある」とNTTデータ関西 法人システム事業部 第三法人システム担当 部長の小谷浩司氏は話す。

 2017年度は、今回の実証実験を通じてロボットやAIを使う上での課題や、診断支援を行う上でのリスクを洗い出したい考えだ。「例えば、ロボットが認識することができない人間の感情が、認知機能を評価するうえでどう影響するかなども明らかにしていきたい」とNTTデータ関西 法人システム事業部 第三法人システム担当 課長の高井克己氏は意気込む。同時に、コミュニケーションロボットに実装するための独自の認知症診断支援アルゴリズムの開発も行う。

 実用化の際には、病院に行く前段階として特別養護老人ホームや病院の待合室、薬局に設置されたコミュニケーションロボットに実装することを想定している。最終的には、「一家に1台置かれたコミュニケーションロボットを使えれば」と小谷氏は話す。体温計や血圧計といった、いわば“認知症計”のようなツールとして2020年の実用化を目指している。

(後列左)NTTデータ関西 法人システム事業部 第三法人システム担当 課長代理の原田慎氏、(後列中央)NTTデータ関西 法人システム事業部 第三法人システム担当 部長の小谷浩司氏、(後列右)NTTデータ関西 法人システム事業部 第三法人システム担当 課長の高井克己氏、(前列)コミュニケーションロボット「Sota」
(後列左)NTTデータ関西 法人システム事業部 第三法人システム担当 課長代理の原田慎氏、(後列中央)NTTデータ関西 法人システム事業部 第三法人システム担当 部長の小谷浩司氏、(後列右)NTTデータ関西 法人システム事業部 第三法人システム担当 課長の高井克己氏、(前列)コミュニケーションロボット「Sota」
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 一家に1台コミュニケーションロボットが置かれるようになれば、単に“認知症計”だけではない機能も見込めるとしている。認知症患者が何度も繰り返し同じことを話す症状は、対応する家族にとっては負担が大きかった。会話相手や見守りツールとしてコミュニケーションロボットを活用することで家族の負担が軽減する可能性があるというわけだ。