数十cm機体を浮かせて、時速400km以上で走る乗り物。磁力を使ったリニアモーターカーを思い浮かべるが、そうではなく、空力を使って浮き上がらせるのが「エアロトレイン」だ。リニアモーターカーや新幹線を代替するのではなく、補完的に使うことを考えたシステムである。三菱電機を36年間務め、ロケットや衛星の制御システムなど数々のプロジェクトを率いて成功に導いてきたスーパーエンジニア、三好一賢氏が考案した。

 同構想が興味深いのは、大きくて細長い翼は使わず、車体の周りに巡らせたブラシあるいは網のような素材を翼として使うことである。既に試作模型を使ってこの形態の翼が、有効に働くことを検証済み。現在は、実用化に向けたパートナーを募集している段階にある。以下では、エアロトレインの構想を三好氏自らが解説する。(日経テクノロジーオンライン編集部)

 空港内では、ターミナル間の移動手段として“エアロトレイン”と称する電車が走っていますが、本稿で紹介する「エアロトレイン」は地面上30㎝を飛ぶ飛行機です。

 トレインとはいうものの、走路にレールは不要で鉄道と言うよりは道路です。ここでは走路をトラック(track)と呼ぶことにします。飛行機なので速度が速く、軽くてレールがないのでトラックは安く建設できます。また、高架式にすれば下の空間を利用できます。

 飛行機には翼がありますが、このエアロトレインは飛行機のような巨大な翼はありません。胴体(機体)で揚力を生じ浮上します。そのためトラックの幅が小さく、トラックが安価で建設が容易です。機体の姿勢と位置をセンサーで検出し、高い精度でトラック内に制御し、例えばカーブでもほとんど揺れません。機体内の低騒音ファンをトラックから供給する電力で電気モーターを回転させて、高効率で走行(飛行)します。

エアロトレインの完成時イメージ図
エアロトレインの完成時イメージ図
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