千葉市では今まさに地域包括ケアシステムの計画を策定中で、医療と介護をどのように融合させるかを検討しているところです。私は週に一度ぐらいの頻度で多職種、地域連携の会議などに出席しますが、その中では皆さんが責任の明確化と分担について活発な議論を交わしています。

千葉市 保健福祉局 地域包括ケア推進課 医療政策班主査の久保田健太郎氏(写真:加藤康、以下同)
千葉市 保健福祉局 地域包括ケア推進課 医療政策班主査の久保田健太郎氏(写真:加藤康、以下同)
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 課題は、今まで医師だけが責任を取っていた部分をどうやってほかの職能が担っていくのかに尽きると思います。個別の議論では住民も含めて分担が可能ではないかとの手応えがありますが、これを市全体のレベルに制度として持ち上げるのはまだまだ困難です。およそ100万人の人口を抱える政令市ですから、全市レベルで実践するとなると日本全体レベルと同じぐらい難しい。

 現場担当者としての願いは、こうした曖昧な部分の明確化です。ICT活用を含めた医療・介護の効率化が国民の生活の質向上につながることを誰が責任を持って説明するのか、どの職能がどの責任を取るのかを日本全体レベルで明確にしてほしい。そうすれば、さまざまな非効率な部分が効率化されるのではないでしょうか。

 一方でこの課題に対し、自治体職員はどのような能力を発揮すべきかを考えなくてはなりません。大きな枠組みでは、市民の信頼を前提とした医療・介護の提供体制構築を目指していく必要があります。全てを我々がやるわけではないし、各専門職が担当する場合もあります。2020年の段階でどこまでできるのか、果たして2025年に実際に間に合うのか。ロードマップが見えてくれば、市民も安心するはずです。

 政令市にとっては、在宅医療の供給量が本当に確保できるのかも大きな問題となります。地域医療構想の中で千葉市における2025年の在宅医療等の需要数は1万5000人と示されていますが、その数字の根拠に関してはなかなか共感できません。実は今、再度レセプトを調査して1万5000人の需要数の中身は一体どうなっているのかを検証しています。なぜなら症状にも軽重があり、各人それぞれ異なるはずだからです。

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 この調査を通じて、かかりつけ医がどの程度の割合で訪問治療をしてくれるのかを加味してパラメーターを設定していきます。さらに今後、総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)が進展すれば、もしかしたら外来に行けないような方も近所の方の支え合いによって外来に行けるようになるかもしれません。そうした要素をどのようにして市町村の計画に加えていけばよいのかといった試行錯誤を繰り返しています。それを繰り返さないと「絵に描いた餅」になる――これが、現場担当者としての実感です。

 もう1つ、団塊世代の「やりがい」をどう捉えるべきかという問題があります。そこで“やりがいをシェアする”ことを考えました。「自分たちが役立つことは何か?」と思わせるような仕掛けがあると、積極的に参加する方が多いのです。そこにどうやって医療・介護専門職の方が関わっていくかは今後の課題ですが、団塊世代に響くようなアプローチをしていけば、地域包括ケアシステムの可能性は広がると感じています。今後はこれら自立した市民がいかにエンパワーメントできるかの制度構築も必要になってくることでしょう(談)。