佐賀県では2011年からすべての救急車にタブレット端末を配備しました。救急現場の大変さを可視化することで、行政として何をすべきか見い出そうと考えたのです。搬送先が探せずに患者を“たらい回し”にしてしまうことを防ぐため、リアルタイムに搬送の情報を共有する狙いもありました。
今回の座談会では、「あったらいいなではなく、なくてはならないシステムを」という議論がありましたが、タブレット端末の導入は“あったらいいな”から始まったものでした。当初は、「そんなばかなことをするなら医師を増やせ。ドクターヘリを入れろ」と賛同を得られませんでした。
しかし、タブレット端末による救急現場の可視化は、結果として新しい政策に結び付きました。搬送データを分析し、2014年にドクターヘリの導入を決めたのです。1クールとして定めた3年間の運用が終わるころには、タブレットは現場にとって「なくては困る」ものになりました。不必要な物に投資をする必要はありませんが、死ぬまでにどう生きるかという選択肢を技術によって増やすことができます。例えばロボットスーツがあれば、身体が衰えても農作業ができます。これはロボットスーツの技術がなくては、農作業をするという選択肢すら与えることができません。デジタルヘルスの技術を使って生きるパターンを提示し、新しい社会の形を議論していければと思います(談)。