横須賀市「イングレス」「ポケモンGO」観光活用のあゆみ
横須賀市「イングレス」「ポケモンGO」観光活用のあゆみ
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 イングレスは「ポータル」と呼ばれる拠点を結び、陣地を取り合うゲームだ。ポータルは地域の名所や神社仏閣などの他、何気ない路傍の道しるべや面白い形の建物などにも設定される。古崎氏はイングレスを遊んでいるうちに、「このゲームは観光振興に使える」と気付き、具体的なアイデアを練り始めた。

 アイデアが具体的な計画に発展したきっかけは同年9月中旬に日経MJに掲載された記事。「人を動かすゲーム」としてイングレスの可能性が述べられていた。その記事のコピーと観光振興プランを携えて、古崎氏らは課長を説得し、部長を説得し、遂に吉田市長にたどり着いた。

 吉田市長は「ノリノリで」計画を承認した上で、「やるからにはイングレスの公式イベントを横須賀で開催しましょう」と注文を付けた。「承認だけでなく、とんでもない目標を与えられた」と古崎氏は笑う。ともあれ2014年10月にイングレスを観光振興に活用する計画が正式に始動した。

 日経MJの記事で紹介されていた熱心なプレーヤーがたまたま横須賀在住だと分かるなど協力者にも恵まれた。イングレスを楽しむ地域のプレーヤーたちと接触。彼らの要望やアイデアもくみながら計画を練った。ナイアンティック(当時は米グーグルの一部門)にも出向き、協力を要請した。

「猿島航路半額」が大成功、地元プレーヤーのアイデア生かす

 2014年12月18日に吉田市長は定例会見で「イングレスによる集客」を発表した。同時に市の広報サイトに特設ページを作成。京急電鉄の駅のポスターや車内の中吊り広告で告知した。ずいぶんと予算を掛けたように見えるが、「実は印刷代くらいしかお金は使ってない」と矢部氏は明かす。実は古崎氏はもともと広報サイト担当のウェブデザイナー。ポスターやサイトは同僚と手分けして自分で作った。京急への提示も横須賀市と京急らで作る横須賀集客促進実行委員会に提供されている枠を使って無料で済ませた。

 目玉となったのは猿島航路の半額割引。市の沖合に浮かぶ無人島「猿島」への連絡船の運賃をプレーヤーに限り半額にした。このアイデアは「猿島でのイングレスは楽しい」との地元プレーヤーの声から発想したものだった。

 古崎氏らが掛け合い、連絡船の運行会社のトライアングルも「乗船者数が減る冬場だから試しに」と実施した。結果的に2カ月強で455人と全乗船者の約1割が利用する大成功になった。この成功体験が東京湾フェリーの「ヨコスカGO割」につながっている。