スマホの画面を飛び出し、街で遊ぶ

 「ガルパンうぉーく」がGPSを使った他のゲームと違う点は、ゲームがスマホの画面内で完結せず、街歩きを楽しみながら遊べるように作られていることだ。クリアするためには多数のパネルを訪れる必要がある。パネルは2013年から設置してきたもので、飲食店や商店、娯楽施設などが1体ずつ管理している。ゲームの合間にご当地グルメを楽しんだり、地元の人とコミュニケーションをとったりすることを通して、街そのものの魅力を発信していける。

 このゲームが成立するのは、地域の人たちが作品を愛し、ファンを温かく迎える地盤が出来上がっているからだ。大洗町では、民間の有志で立ち上げた組織が作品を地域に浸透させていった。

 中心になったのは、地元の物産を販売する「大洗まいわい市場」を経営するOaraiクリエイティブマネジメント 代表取締役の常盤良彦氏。キャラのパネルや、各商店で配布する缶バッジなども手作りで制作してきた。

水道配管などの部材を取り扱う豊年屋機工部では、自動車部に所属するキャラクター「ツチヤ」の等身大パネルを設置。店内にはツチヤのイラストや「ガルパン」グッズが所狭しと並ぶ
水道配管などの部材を取り扱う豊年屋機工部では、自動車部に所属するキャラクター「ツチヤ」の等身大パネルを設置。店内にはツチヤのイラストや「ガルパン」グッズが所狭しと並ぶ
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 現在では多くの商店が、担当するキャラクターにまつわるグッズやオリジナルメニューを用意したり、ファンが提供したイラストやフィギュアなどを展示したりしている。パネルを店頭に展示している豊年屋機工部の店主は、「パネルのキャラクターはうちのかわいい看板娘。キャラをきっかけに来てくれるファンとの交流を楽しんでいる」と話す。

行きたくなるふるさと納税で、大洗町を第2の故郷に

 「ガルパンうぉーく」の体験チケットは入手法にも一工夫した。同町にふるさと納税をした返礼品として提供するようにしたのだ。その理由について、大洗町 まちづくり推進課 課長の小川悟氏は「通常のふるさと納税のように返礼品をもらって終わりではなく、ゲームを体験するために実際に街を訪れることで、大洗町を”第2のふるさと”として好きになってほしいと考えた」と話す。

 実は以前から大洗町では、ガルパンのキャラがプリントされた日本酒やお菓子のセットといった返礼品を用意していた。ファンからはガルパン関係の返礼品の種類をさらに増やしてほしいとの要望があり、返礼品が街を訪れてもらう機会につながるように考えた。ガルパンのファンの「大洗町に貢献したい」という気持ちが今回の企画につながったという。

 今回の返礼品にはチケットの他に、缶バッジやクリアファイルなどのガルパングッズや、現地で使える食事/温泉入浴券が含まれる。2016年9月15日の受け付け開始以降、11月末時点で約600の申し込みがあった。一方でチケット販売の要望も強いため、年明けからはオンラインでのチケット販売も始める予定だ。