BT.2020の色域で再生したデモンストレーション(1)
BT.2020の色域で再生したデモンストレーション(1)
壁掛けのディスプレーでデモを実施した。
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BT.2020の色域で再生したデモンストレーション(2)
BT.2020の色域で再生したデモンストレーション(2)
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BT.2020の色域で再生したデモンストレーション(3)
BT.2020の色域で再生したデモンストレーション(3)
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佐藤直樹氏(パナソニック液晶ディスプレイ 先行開発部次世代LCD開発課)
佐藤直樹氏(パナソニック液晶ディスプレイ 先行開発部次世代LCD開発課)
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 「2016 International CES」の会場では、日本メーカーが自社開発・製造したディスプレーを見ることがなくなった。昨年(2015年)、多彩な液晶技術を披露したシャープは、米国でのテレビ事業から撤退したため、今年は出展していない。ソニーとパナソニックの民生用テレビのパネルは全量、他社から購入したものである。

気を吐いたパナソニックの姫路部隊

 そんな中で、国産勢として唯一気を吐いたのがパナソニックの姫路工場の部隊だ。昨年出展した55型8KのIPS液晶ディスプレーに、新たにレーザーバックライトを採用し、BT.2020比で98%の広色域を達成したのである。第8.5世代ラインで製造した液晶ディスプレーだ。

 「CESのパナソニックブースの壁掛け8Kは、画質で勝負するディスプレーのデモです」と言うのは、パナソニック液晶ディスプレイの若手開発者の佐藤直樹氏(パナソニック液晶ディスプレイ 先行開発部 次世代LCD開発課)だ。同課課長の桶隆太郎氏も交えてインタビューした。

 「我々は55型8Kをさらに進化させ、BT.2020をほぼカバー(98%)するディスプレーに仕上げました。2015年モデルはLEDバックライトを採用しており、BT.2020比82%でした。我々が“BT.2020フルスペック”の最高画質を目指す理由は、液晶ディスプレーの強みを生かせる分野がそこにあると確信しているからです。有機ELがライバルですが、解像度は現在のスマートフォンやタブレット端末の動向から分かるように液晶の方が得意です。動画表示性能については、CRT以外のディスプレーはホールド駆動のため、ぼやけ抑制には倍速駆動が必要です。倍速を標準とする液晶ディスプレーの動画表示性能は、他のディスプレーとほとんど変わりません」(パナソニック液晶ディスプレイ)。

 実は、昨年のCESで発表した55型8Kディスプレーを開発した時に、「次のモデルではレーザーバックライトを採用してBT.2020を攻める」と意思統一していたという。そのため2015年5月の国際学会「SID」で実現を宣言していた。「BT.2020で勧告された超広色域の実現は、現在のところレーザー光源を用いた液晶ディスプレーしか解がありません。有機ELでも難しいです。安定した光源の選定やバックライトの面光源化などレーザーの扱いには難しさはありますが、画質にニーズがあるのであれば、そこに挑戦できる技術力が日本にはあります」と桶氏は胸を張る。