注目企業の経営トップや各分野の専門家が登壇し、来る2016年の政治経済や産業の動向を大胆に占う「徹底予測フォーラム2016」。11月25日に開催する同フォーラム(プログラムはこちら)に先立って、登壇する企業トップのリーダーシップや陣頭指揮する新たな取り組みを紹介する。

 今回は、フォーラムで基調講演を行う中西宏明・日立製作所会長兼CEO(最高経営責任者)の編集長インタビューを再掲する。

記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。

2期連続の営業最高益を更新し、V字回復後も業績の拡大が続く日立製作所。だが、中西会長は現状の成長や改革のスピード感に全く満足していない。日立は10年後、どのようなグローバル企業に変貌を遂げるのか。

(聞き手は 本誌編集長 飯田 展久)

(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)
PROFILE
1946年生まれ。70年に東京大学工学部電気工学科卒業、日立製作所に入社し、大みか工場に配属。98年に日立ヨーロッパ社長。2005年に日立グローバルストレージテクノロジーズ会長兼CEO。2006年に日立の副社長。2010年に社長就任。2014年4月より現職。グローバル化を推進し、2015年度までの中期経営計画で、売上高10兆円、営業利益率7%超などの目標を打ち出している。

キャッシュリッチでないと 戦略性が欠落する。
三菱重工との経営統合? それは分かりません。

2014年度は営業利益が2期連続で過去最高を更新しましたが、今期の見通しは少しずつ、中期経営計画に比べて未達の目標数値があります。売上高10兆円や営業利益率7%超の達成、売上高に占めるサービス比率などです。どう総括しますか。

中西:「何だこれは。ちょっとずつケチるんじゃないよ」と社内では言っていますよ(笑)。

V字回復の印象が強烈だったので、もう成長が鈍化したように見える。そこが新たな課題なのかもしれません。

中西:本当にそうですよ。だから株価が上がらない。現状の課題を乗り越えて、さらに大きな成長を続けるには、やはり発想を変えないとだめです。危機のときは何とかリカバリーしようと、みんな火事場のばか力が出る。「攻め4割、守り6割」と川村さんが言っていたが、実態はみんな攻めも含めて相当、頑張ったわけです。

 それが、過去最高益とか褒められるようになってくると安心して、いつの間にか半分守りになってしまう。今は「攻め7割、守り3割」で行け、と言っているのに、みんな褒められて安心して、3割ぐらいしか攻めてないんじゃないか。こういうマインドセットをどうやって乗り越えられるか。そんな課題が今期見通しの数値に出ていますよね。

とはいえ、今回の特集で触れたように、日本での「日立」のイメージと異なり、海外における「HITACHI」は、外国人の間でグローバル企業としてすごい存在感が出てきている。

中西:ある国、ある地域、ある事業領域というふうに限れば、確かにHITACHIのプレゼンスは世界でかなり高くなりました。これを周辺へどれだけ広げられるようになるかというのがこれからの勝負どころだと思います。