登壇した宮田氏
登壇した宮田氏
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 「ビッグデータや人工知能を最大限活用し、予防・健康管理や遠隔診療を進め、質の高い医療を実現していきます」――。2016年11月10日開催の内閣府「未来投資会議」での安倍首相の発言は、医療分野でのICT活用への政府の強い意志を示すものとして注目を集めた。

 厚生労働省の「保健医療分野におけるICT活用推進懇談会」が2016年10月19日にまとめた提言書も、その目玉はビッグデータや人工知能(AI)をキーテクノロジーとする「次世代型保健医療システム」。懇談会メンバーの1人である慶応義塾大学 医学部 医療政策・管理学教室 教授の宮田裕章氏は、第36回医療情報学連合大会(第17回日本医療情報学会学術大会)(2016年11月21~24日、パシフィコ横浜)の大会企画「医療ビッグデータを読む」に登壇し、提言の内容や背景を語った。

 宮田氏はまず、日本が超高齢化、人口減少、経済成長の鈍化という“オールネガティブ(all negative)”な状況にあるとし、「医療情報のシステム設計も難しくなる」と指摘。製造業や農業と同様、医療でも「ICTを活用していかにシステムを変革するかが非常に重要になってきた」と話した。同氏が提言に加わった次世代型保健医療システムは、ICTを活用することで医療・健康分野のビッグデータを「つくる」「つなげる」「ひらく」ことを目指したものである。

 「つくる」については、最新のエビデンスや診療データをAIを活用してビッグデータ解析し、最適な診療を支援する「次世代型ヘルスケアマネジメントシステム(仮称)」を整備することを狙う。こうした環境整備に伴い、医師は「これまでは自身の知識をアップグレードしてきたが、今後はある程度の知識はクラウドに任せ、より複雑な患者マネジメントやビッグデータに基づくEBM(evidence based medicine)の高度な活用を担うようになる。我々とは別に医師会が提案するプラットフォームも、こうした方向を志向している」(同氏)。

 「つくる」の観点からは、宮田氏が運営に携わるNCD(National Clinical Database)にも言及。他のデータベースとの連携などを通じ、「リアルワールドデータ(RWD)を組み合わせたEBMを生み出せるようになってきた」と話した。