「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference) 2018」(2月11日~15日、米サンフランシスコ)のデータコンバーター分野のセッションは、例年と同様、割り当てられた大会場がすき間なく埋まる盛況ぶりで、この分野への変わらない関心の高さをうかがわせた。同分野に投稿された多くの論文の中から今年は10件の論文が採択され、2つのセッションが組まれた。

 Session 14:High-Resolution ADCsでは、13~20ビットの高分解能と低消費電力を両立した7件のA-D変換器が報告された。また、Session 22:Gigahertz Data Convertersでは、1Gサンプル/秒を遥かに超える速度で変換を遂行するA-D変換器とD-A変換器が計3件報告された。

 Session 14で発表された各A-D変換器は、「ノイズシェーピング」と呼ばれる高精度化の手法や、内部の回路ブロックのリサイクル技術、デジタル補正技術などを駆使して、低消費電力でありながら、高分解能を達成している。A-D変換器の単位電力当たりの性能に相当する業界標準の指標(FOM)が、180dBに迫る発表や180dBを超える発表が多数なされた。10年前のA-D変換器のトップデータと比較してFOMは数十倍に達している。

15ビット以上の分解能で、消費電力は4.5μW

 例えば米University of California, Los Angeles(UCLA)が発表したΔΣ型A-D変換器は、周波数帯域が5kHzまでの信号を15ビット以上の高分解能で変換でき、消費電力はわずか4.5μWである(講演番号 14.2)。高分解能を実現するためには、内部の回路で用いるアンプのノイズを低減することと、アンプの線形性特性を良くすることが共に必要になる。UCLAのA-D変換器では、内部信号の波形に着目し、アンプの回路構成を1回の変換期間内で切り換えることで、低ノイズ化と良好な線形性特性の両立を実現した。このA-D変換器により、例えば、脳神経から出力される微弱な信号を解析し、難病の解明につなげることが可能になると期待される。