米国テキサス州フォートワースで開催の「ITC(International Test Conference)2017」の併設イベントとして、今年も「Industry Test Challenges Meeting」が2017年10月30日に実施された。企業から先端事例などに関する9件の講演があった。

 Industry Test Challenges Meetingは米GLOBALFOUNDRIES社のPhil Nigh氏が主宰するITC併設イベントとして毎年開催されており、ITCの主要メンバーの多くが参加するイベントとして定着している。今回も、企業からの講演に加えて、各社の専門家を集めたパネル形式の討論セッションが設けられ、様々なテストの課題に関して各社の意見が述べられた。

 講演では、昨年と同様に広い分野のホットな話題が提供された。とくにシステム・レベル・テスト(SLT)に関しては2件の講演があり、今後の重要課題として注目されていた。この2件の講演について概要を以下で紹介する。

 SLTの1件目の講演では、台湾MediaTek社のH. H. Chen氏が登壇した。同氏は、テスト技術ロードマップの一環として、「設計とテストの観点からSLTをさらに進めよう」というスタンスで、SLTへの課題を紹介した。テスト技術ロードマップは、ITRS(International Technology Roadmap for Semiconductor)の活動が2015年に終了して以降、活動の場をHIR(Heterogeneous Integration Roadmap)に移して継続されており、その新しいテーマの1つとしてSLTが取り上げられている。Chen氏は、その中でSLTの担当としてロードマップの策定を主導している。

 SLTは半導体ベンダーサイドでのテストとシステムサイドのテストのギャップを埋める技術として、マージナルな欠陥(電源系の欠陥)の増大とともに、半導体のテストにおいても重要が高まっている。Chen氏は講演で、SLTの課題及びそれに対する取り組みについて紹介した。効率的かつ効果的なSLTのための課題として、標準化、自動化及びツールが重要としたうえで、システムレベルの故障及びそのモデル化における物理的機構(ばらつき、ノイズ、劣化など)の考慮の必要性を指摘した。また、SLTと検証との連続性が重要としたうえで、故障の早期発見及び適応型SLTによる価値の創造を目的としたテスト容易設計(DFT)が必要だと述べた。最後に、SLTの将来として、システムの信頼性及びレジリエンス(回復力)向上に向けた取り組みの必要性を示した。

 SLTの2件目の講演では、米Qualcomm社のS. Pagarkar氏が登壇した。新製品導入及び量産時期を前倒しするために、SLTは重要だとして講演した。自動テスト装置(ATE)によるICの機能テストは実応用時と動作環境が違うため、自ずと限界がある。このため、SLTの活用が必要であるとした。そして、その実現の課題として、SLTの開発やSLT故障のデバッグ、ハンドラーのインデックス時間の短縮、長期的に見た装置の信頼性等を挙げた。また、SLTでの故障の複雑性を考慮すると、ハードウエアとソフトウエア及びその統合の包括的な理解が重要であると述べた。