テレビ会議システムを用いて行う認知機能検査は、対面検査との比較において高い水準で一致する――。志學館大学 人間関係学部 教授の飯干紀代子氏は、「第20回 日本遠隔医療学会学術大会(JTTA 2016)」(2016年10月15~16日、主催:日本遠隔医療学会)の精神科遠隔医療分科会で、こうした研究結果を発表した。

志學館大学の飯干氏
志學館大学の飯干氏
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 飯干氏らが行っている神経心理検査は、高齢者の財産管理における意思決定能力(Financial Capacity、FC)を評価するための研究。生活行為の中の基本的な金銭の概念から高額物品の買い物、金融商品のリスク判断など難易度の異なる判断能力が含まれ、視覚・聴覚、言語理解・論理的思考・表明(遂行)、記憶の再生・確認など、階層的にFCを評価する方法の開発に取り組んでいる。弘前COIのサテライト拠点である京都府立医科大学が研究リーダーを務めるCOLTEM(Collaboration center of Law, Technology, and Medicine for autonomy of older adults)で進められている研究である。

テレビ会議システムを用いた認知機能検査の様子
テレビ会議システムを用いた認知機能検査の様子
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 遠隔認知機能検査に用いたテレビ会議システムは、検査時の被験者の表情や振る舞いを高精細な画像と音声で伝送できる特徴を有している。「特に高齢者は、画像と音声が少しでもずれたり、画像にブレが生じたりすると注意力が散漫になり、正確な評価ができない」とし、映像信号に対して音声信号のズレを補正するリップシンク機能を実装したものという。

 実証実験は、健常対照(NC)38例、軽度認知機能障害(MCI)15例、アルツハイマー型認知症(AD)24例の高齢者(平均年齢75.6歳、MMSE平均24.9)を対象として、遠隔による検査と対面による検査を1回ずつ実施。遠隔・対面の検査順序はランダムに決定し、各群とも2週間以上の間隔をおいて行った。また、遠隔による検査では、被験者側にテレビ会議システムの操作を行う補助者を配置した「D to M to P」という形式をとった。