住宅メーカーが、住宅や街の開発を通じて住民の健康増進に寄与する時代に――。大和ハウス工業は、「デジタルヘルスDAYS 2016」(2016年10月19~21日、主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)のオープンシアターで、健康に資する住宅や街づくりの構想を語った。同社 総合技術研究所 フロンティア技術研究室 グループ長の小池昭久氏が登壇した。

大和ハウス工業の小池氏
大和ハウス工業の小池氏
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 大和ハウスは、ヘルスケアを意識した住宅「スマートウェルネスハウス」の開発を進めている。「エネルギーの見える化と最適制御に加えて、住む人の健康状態をモニタリングでき、快適性や利便性も備える住宅」(小池氏)という。同社が2005年に発売した「インテリジェンストイレ」(現在は販売終了)のように、住民の健康に関するデータを取得できることが特徴だ。例えば、寝室では睡眠効率などを、トイレでは尿糖値を、洗面所では体重、血圧、筋肉量、骨密度、体脂肪などを測れるような住宅を目指す。

 スマートウェルネスハウスでは、生活活動データやバイタルデータ、生活環境データを取得する。これらのデータから、独自開発のアルゴリズムで、体力低下、要介護、疾病、認知症などの各リスクを割り出し、健康サービスや保険、食品、高齢者住宅、介護サービスなどの生活サポートサービスと結びつけていくという。

高齢化する団地の持続性を高める

 また、街づくりにおいても健康志向を取り入れる。大和ハウスは、1970年代頃から、郊外型戸建住宅団地の「ネオポリス」を全国で造成してきた。この全国61カ所の団地は現在、「出産期の女性が減るとともに、高齢化が進んでおり、中には存続が危ぶまれる街もある」(小池氏)という。こうした団地の持続性を、街づくりによって高める考えだ。

 具体的には、若者の流入を促すため、例えば、新たな働き方の提案につながるコワーキングスペースの設置、地域でのつながりが持てるような滞在型研修プログラムの提供などを検討する。一方で、既存住民が街に住み続けられるよう、健康に配慮したレシピの提案と連動した買物代行や宅食、通所・訪問型介護、活動量に応じた健康支援といったサービスの整備を進める。

 地域包括ケアシステムにおいては、地域の総合病院や診療所、かかりつけ医とスマートウェルネスハウスで、住民の健康・医療情報(PHR)を共有し、健康や生活の見守りサービスを提供する。「(病院や介護施設などへの入院・入所せずに)在宅治療や通院をしながら自宅に住まい続ける人を増やせるはず」(小池氏)。

 大和ハウスは今後、行政や住民、サービス事業者と連携して、その地域に適した街づくりのノウハウを蓄積するとともに、研究機関やICTインフラ事業者、サービス事業者と協力し合って街づくりのプラットフォーム技術を開発していく。「この両輪で高齢化社会における新しい街づくりを実現し、社会に貢献したい」(小池氏)とする。