メトロール(本社東京都立川市)は、生産ラインにおいてワークの治具からの浮き上がりを±0.5μmの繰り返し精度で測定できる空圧式の着座センサー「エアマイクロセンサ」と、棒材の長さ不良を1μmの繰り返し精度で検知するスイッチ「ワイヤレス寸法判別スイッチ」を「JIMTOF2016」(第28回日本国際工作機械見本市、2016年11月17~22日、東京ビッグサイト)に出展した。いずれもインラインでワークの良否を判定し、後工程に不良品が流れるのを防止する。

エア流量の変化で着座不良を検知

図1 「エアマイクロセンサ」
図1 「エアマイクロセンサ」
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 エアマイクロセンサは、切粉を噛み込むなどしてワークが治具から浮き上がった状態を、エア流量の変化によって検知するもの(図1、図2)。許容公差内で着座を確認し、加工不良が発生するのを防ぐ。従来の技術としては空圧式のギャップセンサーがあるが、精度が±20μ~50μmで、着座しているか否かを確認することしかできない。例えばガスを充填するHDDを加工する場合、従来の検知精度では加工精度を保てず、ガス漏れが発生する恐れがあるという。それに対して同社のセンサーは、繰り返し精度が±0.5μmと高く、切削加工前に不具合に気づくことができ、加工不良品の発生を抑えられる。

図2 「エアマイクロセンサ」の適用例
図2 「エアマイクロセンサ」の適用例
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 工作機械内に設置できるように、クーランドが飛び散る環境に耐えるIP67の保護構造とした。これによりエア配管を縮められるので、応答速度が高まる。従来のように機外に空圧式ギャップセンサーを設置し、エア配管が12m引き回した場合では、応答速度は5秒以上かかっていた。機内に搭載すれば配管は1.5mとなり、応答速度は0.8秒まで向上する。

 治具とワークの着座確認の他にシャンクとホルダーの密着確認、研削盤において回転する砥石の摩耗検出にも使える。一般に、砥石の摩耗を測るには振動センサーを使うが、繰り返し精度は±30μm程度。それに対して同社のセンサーは、非接触で高精度に検出できる。

 判定基準を1点設定して良否を判定するタイプと、正常値に対して上限と下限の2点を設定して上側、下側それぞれの不良を検知できる2点設定タイプがある。価格は1点設定タイプで5万2500円、2点設定タイプで10万円以下。同社代表取締役の松橋卓司氏は「エアは昔から使われてきた、いわば“枯れた技術”。それをリニューアルし、ミクロン単位の精度を低価格で実現したことに意味がある」と話す。さらなるニーズとしては、ユーザーから「数値を表示してほしい」といった声が寄せられている。それに対して同社は「空気圧の変化量を長さに変換するとコストがかかるが、空気圧の変化量自体を表示する機能の追加を検討している」(同氏)という。