岩井氏
岩井氏
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 医療・健康分野におけるビッグデータ活用は、生命保険業界にも大きなインパクトを与えている。セミナー「医療ビッグデータ・サミット2016秋」(2016年9月14日、主催:日経デジタルヘルス)では、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険 事業企画部 課長の岩井克晃氏が「保険ビジネスをビッグデータで変革する」と題して講演した。

 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険は、2016年から「健康応援企業」を掲げて新たなビジネスモデルの開拓に乗り出している。背景には、多くの生命保険会社がシェア獲得にしのぎを削る中で、独創的なサービスで顧客満足度を向上させていかねばならない事情がある。岩井氏によれば、これまでのように一方向的な保険商品の販売に偏重せず、双方向で顧客とつながりながら、健康を軸にした多彩なサービス展開を目指していくという。

 顧客との直接的な接点を増やす機会に貢献するのが、肌身離さず身につけるウエアラブルデバイスやスマートフォンのモバイルアプリなどだ。岩井氏は「新たなビジネスモデルの構築にデジタル技術を駆使してチャレンジしていく。成長力のある分野と考えている」と述べ、そのために積極的にビッグデータを活用し、新しい形の保険サービス開発に注力していきたいとした。

 手始めに米Fitbit社と提携。自社の約3000人の社員を対象にFitbit製ウエアラブルデバイスを貸与した。デバイスから採取したバイタルデータと、健康保険組合と連動しながら得た定期健康診断データを分析し、いわゆる健康経営を実践しながら健康ソリューションを探っていく。今後は顧客に貸与してサンプルを採取する予定。着実にデータ数を増やしながら新サービス開発に役立てていく。

 同社が描くICTを軸にした健康関連サービスは、いくつかのステップを経て顧客価値が高まる包括的な構造となっている。例えば個人の属性に合った健康コンテンツ提供、フィットネスクラブと組んだ健康活動のサポート、健康相談サービス、健康活動結果に対するインセンティブ付与などを想定する。その根本には「顧客を理解することを最優先にしていきたい」(岩井氏)との思いがある。これらを支えるデータ収集のツールとして、ウエアラブルデバイスやモバイルアプリが活躍する。

 2016年9月からは健康サービスブランド「Linkx(リンククロス)」を展開し、月々500円で加入できる臓器移植・先進医療特化型保険「Linkx coins(リンククロスコインズ)」(2016年9月20日開始)を開始する。本商品がネット専用であることからもわかるように、同社では今後、さらなるICT化を進めていく予定だ。