「K2016(第20回国際プラスチック・ゴム専門見本市)」(2016年10月19日~26日、ドイツMesse Düsseldorf)において、研究開発とビジネスの情報交換、イノベーションの場を提供するイベント「Science Campus」では、欧州の15大学と財団が軽量化技術、新素材、Industry 4.0について出展した。射出成形における変種変量生産や、金属や繊維材料との組み合わせによる軽量化などのイノベーションについて出展があった。射出成形機メーカーに、複数の材料を用いる複合成形体への取り組みが多数見られた。

インラインで製品仕様を変更しつつ射出成形

 ドイツ・アーヘン工科大学Institute of Plastics Processing(IKV)は射出成形機、金型、ホットランナー、センサーなどのドイツのメーカー12社と提携し、部分的に強化した構造を持つ発泡成形品の生産システムについて、インラインで変更しながらさまざまな仕様の製品を射出成形する実演を行った(図1)。IKVは伝統的に生産システムの心臓部は「金型」であるとする立場から、全体システムを開発するポリシーを持つ。

 成形品は自転車のサドル。連続する強化繊維をショットごとに定量供給し、供給された長繊維と化学発泡剤を「Proform」(ドイツARBURG社) で射出、発泡量は金型のコアバック制御でコントロールしている。キャビティーにはラミネートとテープをあらかじめインサートし、ショットごとに指定された製品仕様で射出成形ができる。Industry 4.0に対応し、インターネットによる生産セルの連携で生産性向上を目指すとしている。

図1 長繊維強化・発泡射出成形品(アーヘン工科大学IKV)
図1 長繊維強化・発泡射出成形品(アーヘン工科大学IKV)
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 ドレスデン工科大学Institute of Lightweight Engineering and Polymer Technology(ILK)は、自動車構造体の炭素繊維プリプレグと鋼板の複合成形技術を出展した。同研究所では世界でも珍しい型締力3000トンの大型射出成形機を保有し、自動車用大型構造体の実務的な加工技術の研究を行っている。旧東ドイツ地域に拠点があり、名誉教授にはウィルヘルム・フォン・シーメンス(電機)、フェルディナント・フォン・ツェッぺリン(飛行船)が名を連ねる。