第22回 日本医療情報学会春季学術大会が2018年6月21日から3日間、新潟市の朱鷺メッセ(新潟コンベンションセンター)で開催された。今大会のテーマは「医療情報の再発見 ~研究の多様化の中で今なすべきことは?~」である。

 21日のチュートリアルに続き、実質的な開幕となった22日の大会長講演では、新潟大学医歯学総合病院 医療情報部 教授の赤澤宏平氏が登壇。大会テーマを演題として、「医療情報学とは何か」をあらためて問いただし、赤澤氏自身が考える研究のあるべき姿を提言した。

開会式の様子
開会式の様子
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 赤澤氏はまず、医療情報学の定義を1980年に開原成允氏らがまとめた著書や、80年代に活躍した医療情報学者らによる論文の中で述べられている医療情報のあり方から紹介。これらを基に赤澤氏は、「医療情報学とは、医学・医療の情報を医学・医療に有効に利用する方法を研究する科学」という解釈を提示した。

 研究であるからには、その内容を原著論文もしくは研究報告という形で社会に公表することが当然だと指摘。その上で、「医療情報学の研究は、新規性、優れた実用性、顕著な社会的価値のいずれかを包含すべきだ」(同氏)と強調した。

大会長講演に登壇した赤澤氏
大会長講演に登壇した赤澤氏
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 医療情報学の研究の特徴について赤澤氏は、かなり主観的な考えとしつつ「“生鮮食品”のようで、“学際的”で“実用性”が重視される」という考えを披露。研究で用いられる技術や装置の進歩が速く、現在の技術を凌ぐ技術が5年もすれば出てくるため、研究テーマで扱う手段、要素などが次々と変わることを生鮮食品に例えた。

 学際的と表現した点は、例えば術後感染症の予測を機械学習で行うという研究などでは、消化器外科や感染管理、薬学など他の研究領域との関連の中で行われるからだと説明。そして、研究の新規性も重要だとしつつも、「それ以上に実用性が重視される点が医療情報学の研究の特徴だろう。医療情報学の中で、きちんと(実用性の視点を)評価していくべきだと考える」と述べた。