中国の半導体産業の成長ぶりには、世界中が注目している。日本に限らず、自国の半導体産業が中国に乗っ取られると懸念している国は少くない。懸念が広がる背景には中国の半導体産業の現状があまり伝わっていないことがある。このため、さまざまな噂が飛び交うことになる。

講演する魏 少軍(Shaojun Wei)氏。日経テクノロジーオンラインが撮影。
講演する魏 少軍(Shaojun Wei)氏。日経テクノロジーオンラインが撮影。
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 中国半導体産業の真の姿を紹介しようと、中国清華大学教授で中国半導体産業協会(CSIA)副会長でもある魏 少軍(Shaojun Wei)氏が、54th Design Automation Conference(DAC 2017、6月18日~22日、米国Austin)で講演した。タイトルは「China's IC Industry: Today and Tomorrow - Its Influence on Global Design and Design Automation Community」(19日月曜日のSky Talk)だった。同氏は清華大教授やCSIA副会長以外にも、半導体に関する多数の組織の要職を務めており、中国半導体業界の実力者の1人と言える人物だ。

中国政府が2014年に公布した半導体産業育成の指針である「国家集積電路産業 発展推進綱要」。魏氏の講演スライド。
中国政府が2014年に公布した半導体産業育成の指針である「国家集積電路産業 発展推進綱要」。魏氏の講演スライド。
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 同氏によれば、2014年に中国政府が半導体産業育成の指針である「国家集積電路産業 発展推進綱要」を公布し、これが様々な憶測を生む発端になったとする。この中で、中国政府は2020年に中国半導体産業の規模を1兆元(約16兆6000億円)にするという目標を示した。この目標値に世界が過敏に反応したというのが同氏の意見である。例えば、米国のオバマ政権の末期(2017年1月)には、中国の脅威を念頭においた米国半導体産業のポジションを維持するためのレポートが出された。トランプ政権に代わっても、この流れは変わらず、2017年5月には米国商務省長官が「中国の計画が米国半導体産業に脅威を与えている」旨の発言をしたという。

中国半導体の成長を懸念する例。魏氏の講演スライド。
中国半導体の成長を懸念する例。魏氏の講演スライド。
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