どの端末にも価値がある

 荒木氏らが、電子カルテのマルチプラットフォーム化が必要だと考えた理由はこうだ。まず、スマートフォンがフル電子カルテ機能を持つことにより、医師にとってはじめて“使えるモバイル電子カルテ”となること。

 加えて、「Windowsデスクトップは今後も(電子カルテ端末の)主流であるだろうし、Androidはスマートフォンで高いシェアを持ち、iOSはハードウエアに魅力があるなど、それぞれに価値がある。(電子カルテアプリケーションを)それらのプラットフォーム個別に開発するのは、開発費や保守コストの点から不可能。マルチプラットフォームでの開発が必要になる」(荒木氏)。

 さまざまな端末のプラットフォームに対応するために考えられるアプリケーション実装手段として荒木氏らは、各OSのネイティブアプリ、クロスプラットフォーム開発ツール、Webブラウザーアプリ、クライアント仮想化技術の4点を検討した。しかし、どれも決め手に欠けたと同氏は説明する。

 「Windowsは.NET Framework、AndroidはJava、iOSはObjective-Cといった開発言語でネイティブアプリの開発はマルチプラットフォームとは言えない。クロスプラットフォーム開発ツールはさまざまあるが、どこまで使えるか1つずつ検証が必要な上、アプリストアからのダウンロードが基本のため院内資源配布に課題がある。Webブラウザーアプリは、ブラウザーからバーコードリーダーなどのプログラムを起動できないのが致命的。また、OSやブラウザーの違いにより完全なマルチプラットフォームにならない。クライアント仮想化は、実際にGO-Globalを使いデスクトップパソコン用の電子カルテアプリを表示させたが、横スクロールなどの画面表示ができず使い物にならなかった」(荒木氏)。