電子回路関連産業を中心とした展示会「JPCA Show 2016」(2016年6月1~3日、東京ビッグサイト)では、プリント配線基板のネット通販などを手掛けるピーバンドットコムも出展していた。同社のプリント配線基板製造は、フィルム作画費や版製造費といったいわゆる「イニシャル費用」を0円とし、小ロットを短納期で納めるという点を売りにする。プリント配線基板の製造サービスから、Gerber形式のデータなどを作成する基板設計サービス、実装サービス、部品調達サービス、筐体・パーツ製造サービスへと、順調に対象サービスを増やしており、2016年5月末には、ハーネス加工サービスも開始した。

 同社がプリント配線基板のネット通販を開始したのは2003年(当時の社名はインフロー、2012年に社名変更)。10万円ほどとされるイニシャル費用がかからず、小ロットをネット通販で気軽に注文できることを売りに、事業を拡大してきた。

 この「イニシャル費用0円」を実現する仕組みの1つが、「異種面付け」だ。大型のパネルに、異なる基板を効率良く複数面付けする、いわば「相乗り」によって、製造コストを下げている。そのため、基本的には基板の層数や材質などの仕様を標準化している。原料・資材調達・保管・製造工程でのムダ削減にもなり、製造コスト低減に役立っているという。標準仕様外の要望には別途注文で応じる。フィルムや版は保管せず、データの保存により保管・管理費も削減しているという。

ピーバンドットコムの少量低コスト生産を支える「異種面付け」したプリント配線基板。協力工場は日本、韓国、台湾、中国にある。「国産の方が安心できる」といった声に応え、韓国・台湾・日本の工場が選べるようにした。「為替の影響もあるので、今は国内生産の方が多少安いかも。見積もりで確認できるので試してほしい」(同社説明員)。量産に向けたイニシャル費用ありの生産にも対応する。
ピーバンドットコムの少量低コスト生産を支える「異種面付け」したプリント配線基板。協力工場は日本、韓国、台湾、中国にある。「国産の方が安心できる」といった声に応え、韓国・台湾・日本の工場が選べるようにした。「為替の影響もあるので、今は国内生産の方が多少安いかも。見積もりで確認できるので試してほしい」(同社説明員)。量産に向けたイニシャル費用ありの生産にも対応する。
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 イニシャルコストに関わる工程が省けるような、特殊な製造方法などは採用していない。同社が標準とする仕様は、最も需要の多いごく一般的なもの。その方が、信頼性や品質などに問題が生じにくいからだ。協力工場を10数社に絞り、品質管理に努めているという。

 当初、ユーザーには学校や個人が多かったが、今は企業が開発などに利用するケースが多くなっているという。累積取引社数は1万7000社を超え、ユーザーには日産自動車やルネサス エレクトロニクスなども含まれる。こうした大手メーカーを含む企業をつかめるのは「短納期」と「納期の明確化」ではないかと、同社では見ている。