スマホとセンシングの連携で健康維持

 腰痛の改善指導でビジネスパーソンの生産性低下を18.3%から10.3%に減らし、8週間の指導で体重を3.1%減らすことができた——。

IFA Global Press Conference 2016で講演するPhilips社のドイツ法人のBrend Laudahn氏
IFA Global Press Conference 2016で講演するPhilips社のドイツ法人のBrend Laudahn氏
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 オランダRoyal Philips社のドイツ法人でManaging Directorを務めるBrend Laudahn氏は、提携するドイツの大手保険会社Allianz社と共同で取り組んだ企業向けの健康プログラムの成果に胸を張った。香港と深圳で2016年4月17〜20日に開催した報道関係者向けイベント「IFA Global Press Conference 2016」の講演で語った。

 いずれも、各種センサーを用いて生体情報を収集し、その情報を基に医療関係者などの専門家が個人指導する取り組みである。Philips社は今、個人向けの医療・健康サービスに力を入れている。2015年9月にドイツで開催された家電見本市「IFA」では、「Personal Health Program」と呼ぶ新サービスを披露した。

 このサービスでは、スマートウオッチや血圧計、体重計で取得した生体情報(バイタルサイン)を、スマートフォンを通じてクラウドネットワーク上に送信し分析する。その結果をユーザーに提示することで健康維持に役立てる取り組みだ。

Philips社は、Personal Health Programと呼ぶ医療・健康関連の新サービスに力を入れている
Philips社は、Personal Health Programと呼ぶ医療・健康関連の新サービスに力を入れている
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 こうした個人による自己健康管理の取り組み、特にスマートフォンと生体情報の小型計測機器を組み合わせる「モバイルヘルス」は、今後の医療・健康サービスで大きな役割を果たすという見方が強い。背景にあるのは、先進国を中心に世界で進行する高齢化と、生活習慣病などの慢性疾患の有病率の増加だ。

 高齢者や生活習慣病による医療サービスの需要拡大は医療費の増加に直結し、各国の財政を圧迫している。増加する一方の医療費を抑制する施策として、モバイルヘルスは世界的に大きな期待を集めている。病院の外、例えば一般の家庭や企業を医療提供の場として活用し、医療サービスを「治療から予防へ」と転換していこうとする流れの一つになり得るからだ。

高齢化と慢性疾患の増加などによって、医療支出がGDP(国内総生産)に占める割合は世界的に増加の一途をたどっており、各国は医療制度改革の必要性に迫られている
高齢化と慢性疾患の増加などによって、医療支出がGDP(国内総生産)に占める割合は世界的に増加の一途をたどっており、各国は医療制度改革の必要性に迫られている
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 生活改善や病気の予防、在宅ケアを医療連携(Health Contiuum)の流れの中に取り込む。これによって、日常的な疾病を対象とした1次医療を提供する医療機関への不必要な通院や入院治療を大きく減らせる可能性がある。