Qualcomm社が買収したNXP社は、車載半導体で世界一のシェアを誇るメーカーだ。また、ICカードやパスポートなどに組み込むセキュリティーチップでも圧倒的な強さがある。今回の買収によって、Qualcomm社の事業範囲が広がることは確実だが、これは単なる事業拡大以上のインパクトを伴うかもしれない。同社が新たに獲得した市場は、これからの成長が確実視されているものばかりで、しかも新規参入の障壁が高いものばかりだからだ。

 スマートフォン向け市場で得た豊富な資金力を持った半導体メーカーが、高い参入障壁に守られた市場に入り込むことになる。それによって混乱するのは参入される側か、それとも参入する側か、はたまたユーザーか。服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏が、未来のQualcomm社が持つ可能性と、これからの競合他社に与えるインパクトを考察した。
(記事構成は伊藤元昭)

服部毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
 大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・理事。マイナビニュースや日経テクノロジーオンラインなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」がある(共に共著)。

【質問1】Qualcomm社の経営者の立場なら、自社の価値を最大化するために何をしますか。
【回答】手探りだった車載・IoT分野へ本格参入し業界デファクトスタンダードの構築、FinTechやIoTに対応したセキュアなハイエンドスマホ向けビジネスの強化充実

【質問2】今回の買収で、最も影響を受けると思われる競合はどこですか。
【回答】ルネサス エレクトロニクス

【質問3】買収後のQualcomm社に死角があるとすれば、どこが問題になると思われますか。
【回答】 Qualcomm社、NXP社、Freescale社の企業文化や事業性格の違いによる経営や技術の一体化の困難や遅延