今回の買収に際して、日本の一般紙やテレビなどの報道の中には、「ソフトバンクはARM社のような無名の企業をなぜ3.3兆円も出して買ったのか」という切り口からの報道が多くあった。しかし、電子業界や半導体業界にとっては、ARM社の方がよほど身近で巨大な存在だ。「ARM社は、なぜ極東のいち通信事業者であるソフトバンクに買収されてしまったのか」というのが世界の関心事であろう。そして、電子産業や半導体産業にとっては、ソフトバンクがARM社をどう生かすかより、ARM社の強みは今後も継続するのかといった点こそが気になる。
そもそもARMコアは、なぜこれほど広く普及したのか。IoT時代にもその強みが生かされると目されるARMの真価を測るため、強さの原点を解き明かしたい。今回の回答者であるテカナリエの清水洋治氏は、マイコンメーカーの中で、ARMコアと市場で対峙する立場にいた。同氏は、ARM社の強みを、CPUというチップを構成するコアとはどのような存在なのかといった本質論からARM社の課金モデルまで、広範囲の視点からこと細かに分析した。そのうえで、IoT時代にARM社の強みが継続できるのかを検証した。(記事構成は伊藤元昭)
技術コンサルタント