Mooreの法則の先行きを不安視する声を尻目に、半導体の微細加工技術の進歩の先行きを照らし出す話題が増えている。ベルギーの研究開発機関imecは、2017年5月16日と17日に開催した「imec Technology Forum」で、新たな半導体ロードマップを公開した。そこには、2025年以降の実現を想定して「14Å(1.4nm)」という新しいプロセスノードが付け加えられた。

 この新しいプロセスノードは、サブnm時代への突入を意味しているわけではない。しかし、あえてÅという原子の大きさや結晶の格子定数を示すことに使われる、これまでとは別の単位を持ち出して新たなプロセスノードを提示した点は注目に値する。さらなる微細加工技術の開発に挑む決意と、挑戦すべき技術課題の共有を意図したimecのメッセージを強く感じる。

 今回のテクノ大喜利では、「半導体、Å時代はくるのか?」と題して、半導体のÅ時代の意義と、そこでの課題を洗い出すことを目的として議論した。最初の回答者は、野村證券の和田木哲哉氏である。半導体関係者への豊富なヒアリングと、緻密な洞察で、Å時代の技術的な課題を明確化し、それによって変貌する先端半導体ビジネスの姿を考察した。ここで導き出された結論に現実感を覚えない読者もいるかもしれない。しかし、弱肉強食の金融業界で生きる同氏の視座からは、想定の範疇にあるリアルな未来として見えている。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
和田木 哲哉(わだき てつや)
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター
和田木 哲哉(わだき てつや)  1991年早大教育卒。東京エレクトロンを経て、2000年に野村證券入社。アナリストとして精密機械・半導体製造装置セクター担当。2017年、Institutional Investor誌 アナリストランキング1位、日経ヴェリタス人気アナリストランキング 精密半導体製造装置セクター 1位。著書に「爆発する太陽電池産業」(東洋経済)、「徹底解析半導体製造装置産業」(工業調査会)など。
【質問1】14Åノードのテクノロジードライバーとなる半導体チップは何だと思われますか?
【回答】超高性能AIチップ。
【質問2】14Åノードプロセスを確立する上で、最大の課題は何だと思われますか?
【回答】民生用アプリケーションでは吸収不能な製造コスト。
【質問3】サブnmのÅ時代はやってくると思われますか?
【回答】やってくるのは、もっと恐ろしい時代。