日本の製造業の強みの源泉として、ノウハウや経験といった他社がまねできない固有の「暗黙知」を持ち、それに基づいて部品間の仕様や生産工程間の運用の「擦り合わせ」をエレガントにこなすことができる点が挙げられていた。こうした強みは、豊富な現場経験で養われることから、外部企業から調達することができない固有の強みであり、自社で地道に蓄積していくべき強みであった。
現在、AI(人工知能)システムの導入を考えるものづくり企業の多くが、熟練技術者の知恵を継承するためにAIを使おうとしている。熟練技術者の知恵をAIに映すということは、知恵をシステム化して流動性を高めることでもある。他社がまねできないと思っていた強みが簡単に模倣できるようになる、逆に自社内でしか養えないと思っていた強みを他社から調達できる。こうした時代に、日本企業はどのようにAIを活用していったらよいのだろうか。
AI時代の製造業、特に日本の強みについて議論している今回のテクノ大喜利。2番目の回答者は、アーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏である。同氏は、AIによる暗黙知の流動性の増大という、新しい視点からAI時代の暗黙知のマネージメントのあるべき姿について論じる。
アーサー・D・リトル(ジャパン) プリンシパル