クラウドサービスのベンダーも、スマートフォンをはじめとする電子機器のメーカーも、そして自動車メーカーまでも、人工知能(AI)関連処理を専門に実行するAIチップの開発に乗り出すようになった。AIの活用によるビジネスイノベーションの創出や仕事の高効率化のアイデアは、既に星の数ほど多く出てきている。ただし、実際にこうしたアイデアを具体化し、ビジネスにしようとすると、現状のAIシステムでは非力すぎたり、高コストでありすぎたりと、ニーズに応えられない場合も多いようだ。

 AIチップの開発では、これまでのプロセッサーとは仕組みが異なる技術が使われ、半導体ユーザー自らが独自開発に乗り出す例も散見される、従来とは異なる動きが多く見られる。AIの応用分野は極めて広い。AIチップに求められる要求もまた多様だ。半導体メーカーがより多くの応用を集約できるチップを開発・生産し、これを利用して機器メーカーやサービスプロバイダーが価値の高い機器やサービスを生み出す。こうした従来の業界構造とは別の形が出来上がる可能性も出てきている。

 その一方で、人工知能(AI)やIoTを応用する動きが、さまざまな業種に広がり、「X-Tech」と呼ばれる技術を活用したビジネスイノベーションを創出する動きが活発化してきた。さらに、日本の基幹産業である自動車産業では、欧州から世界へと突然広がったEVシフトへの迅速な対応が迫られている。2018年、こうした状況と動きを受けて、一体どのような出来事が起こるのだろうか。

 「大喜利回答者、2018年の注目・期待・懸念」をテーマに、各回答者が注目している2018年の動きを挙げていただいている今回のテクノ大喜利。4番目の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。同氏は、2018年の注目点としてAIチップを巡る動きを挙げ、動向を注視する上での視点を提示した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部 毅(はっとり たけし)  大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・終身名誉会員。マイナビニュースや日経テクノロジーオンラインなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】2018年に産業や社会に大きなインパクトを与える注目すべき動きは何ですか?
【回答】戌年(ドッグイヤー)の勢いで突進するAIチップの開発と実用化
【質問2】長期的観点から発展や成長、ブレークスルーの登場を期待していることは何ですか?
【回答】 AI やIoTの実用化による地球規模の社会問題の解決
【質問3】2018年に産業や社会へのネガティブな影響を及ぼしそうな懸念点は何ですか?
【回答】日の丸製造業の劣化による高品質神話の崩壊と国際競争力の低下