パブリッククラウドの競争がますます激化している。米IT大手が2018年2月初旬までに発表した17年10~12月期決算では、米Microsoftのパブリッククラウド事業の売上高が米Amazon.comのそれを上回り、米IBMの同事業も年間100億ドル(約1兆900億円)の大台を超えた(表1)。
企業名 | 事業名 | 売上高 | 成長率 |
---|---|---|---|
Microsoft | Azure、Office 365など | 53億 | 56% |
Amazon.com | Amazon Web Services | 51億1300万 | 45% |
Google Cloud Platformなど | 10億以上 | - | |
IBM | IBM Cloud | 55億(ハードウエア含む) | 30% |
(参考)Salesforce.com | クラウド専業 | 26億7900万 | 25% |
(参考)Oracle | Oracle Cloud | 15億1900万 | 44% |
Microsoftは18年1月31日に発表した17年10~12月期決算で初めて法人向けクラウド事業の売上高を公表し、前年同期比56%増の53億ドルになったと明かした。18年2月1日にAmazon.comが公表した17年10~12月期決算における「Amazon Web Services(AWS)」の売上高は51億1300万ドル(前年同期比44.6%増)であり、パブリッククラウドの売上高でMicrosoftがAWSを上回った可能性が高い。
Microsoftはこれまで「Intelligent Cloud」事業部門の売上高は公表していたが、同事業部門の売り上げには「Microsoft Azure」だけでなく、オンプレミス用ソフトウエアなども含まれていた。またMicrosoftにとってMicrosoft Azureに並ぶクラウド事業の柱である「Office 365」の売上高は「Productivity and Business Processes」事業部門に計上されていた。そのためMicrosoftとAmazon.comの間でクラウド事業の規模を比較するのは難しかった。
IaaS/PaaSだけでなくSaaSも加えた総力戦
今回Microsoftが発表した法人向けクラウド事業の売上高には、IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)であるMicrosoft Azureや、SaaS(Software as a Service)であるOffice 365や「Dynamics 365」などが含まれている。一方のAWSも近年は、IaaSやPaaSだけでなく、SaaSの提供にも力を入れており、今回両社が発表したクラウド事業の数字を比較するのは妥当と言える。
米IBMが18年1月18日に発表した17年10~12月期決算ではクラウド事業の売上高は前年同期比30%増の55億ドルとなっているが、これにはプライベートクラウド用のハードウエア売り上げなども含まれており、MicrosoftやAWSのクラウド売上高とは比較できない。ただしIBMは同時に、IaaSやPaaS、SaaSなど「As-a-service」の2017年通年の売上高が前年同期比20%増の103億ドルに達したと発表している。IaaS/PaaS/SaaSを合計した売上高が100億ドルを超えるのは、Amazon.com、Microsoft、米Salesforce.comに続き、IBMが4社目となる。
Google Cloudも四半期で売上高10億ドル超え
米Googleの親会社である米Alphabetはクラウド事業の売上高を公表していない。しかしAlphabetが18年2月1日に発表した17年10~12月期決算に伴う電話会見でGoogleのSundar Pichai CEO(最高経営責任者)は、IaaSとPaaSである「Google Cloud Platform」とSaaSである「G Suite」からなる「Google Cloud」の売上高が初めて四半期で10億ドルを突破したと発表している。
17年10~12月期決算を発表したこれら4社と、決算期の異なるSalesforce.com、米Oracleのクラウド事業を勘案すると、AWSとMicrosoftが年間2兆円強の規模でトップを争い、Salesforce.comとIBMがl年間1兆円超で3位グループを形成し、OracleとGoogleが年間5000億円前後で上位を追いかけている構図が分かる。