データ伝送の高速化によって、新たなノイズ対策が求められるようになってきた。信号の減衰はより顕著になっており、また低消費電力化のための低電圧化も進み、電源電圧の揺れに対する許容度がますます厳しくなっている。日経BP社は「高速インターフェースにおけるノイズ対策の勘所」と題したセミナーを、技術者塾として2017年1月31日に開催する(詳細はこちら)。本講座で講師を務める河村隆二氏(イノテック 設計解析ソリューション部 部長)に、高速インターフェースにおけるノイズ対策の技術動向や、今後のニーズに対応するために必要なことなどを聞いた。(聞き手は、田中直樹)

――高速インターフェースとノイズ対策について、この1年の市場動向、応用動向をご紹介ください。

 オリンピックやサッカーのワールドカップの中継を想定した4K放送の普及、カメラやスマートフォンの4K化、ケーブルテレビの光伝送化の普及などから、大容量データを扱うソース情報があふれてきています。その結果、それらを伝送するためのシステムの高速化が求められています。

 こうした高速伝送におけるノイズ対策は、セキュリティー強化のための監視カメラの高画質化、車載センサーを用いた自動運転の開発、暗がりのような低照度でもノイズが入らないカメラ、HDR(High Dynamic Range)に代表されるデジタル画像処理を生かした写真、絵画、動画ビデオの作成にも応用されつつあります。

 また、データ伝送の高速化によって増加する消費電力を抑えるための低電圧化が進んでいます。

――高速インターフェースとノイズ対策について、この1年の技術動向、技術トピックスをご紹介ください。

 この1年で、4K画像伝送に使われる12G-SDIインターフェースを搭載したシステム開発が増えてきました。この12-SDIをはじめ、3G-SDI、HD-SDIなどのSDI規格は、SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)によって規定された信号品質規格に準拠しなければなりません。その中でも特にリターンロス規格の準拠が難しく、規格が満たせるまで何度も設計をやり直す必要が生じます。

 高速な演算処理を行うために欠かせないメモリーインターフェースにおいても、DDR3からLPDDR3、DDR4、LPDDR4へと、高速化、低消費電力化のために低電圧化だけでなく、終端方式をテブナン終端からプルアップ終端に変更したり、データ送信ビットにDBI(Data Bus Inversion)ビットを付加する技術の採用などが進んでいます。

 DDR系は、高速処理のために多くの信号が同時にオンオフするため、クロストークの問題や、電源変動による波形ひずみとタイミング変動の問題がこれまでも数多く発生しています。高速化と低電圧化によって、さらにそれらの影響度が大きくなってきています。
 
 また、カメラのイメージセンサーで受けた画像データを伝送するために使用されるMIPIに代表されるCSI-2やSLVS-ECなどのインターフェースも、2Gビット/秒を超える高速伝送になっており、低消費電力化のための低電圧化も進んでいます。

 車載分野においても、今後の自動運転システムなどの普及に伴い、今後高速処理が求められてきます。民生品と比較して、高い信頼性の確保や外部放射ノイズ、伝導ノイズ、イミュニティーなどへの厳しい対応が求められています。