テクノサポートオーテス代表、ワールドテック講師の岡本邦夫氏
テクノサポートオーテス代表、ワールドテック講師の岡本邦夫氏
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 ねじ締結のトラブルに悩まされる技術者が一向に減らない。原因はねじを軽視し、設計開発において後回しにしていることにある。実際、ねじに関する知識や締結のメカニズムといった基礎の習得を怠っている技術者は少なくない。

 「技術者塾」において「決定版!トラブルを回避する自動車部品のねじ締め」の講座を持つ、テクノサポートオーテス代表、ワールドテック講師の岡本邦夫氏に、ねじの締結について学ぶ利点やポイントなどを聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──ねじ締結の知識や技術は、今なぜ求められるのでしょうか。

岡本氏:ねじは多くの製品に使用されている、非常に身近で単純な構造の部品です。短すぎる故に、接合部品にねじを使う製品設計や、ねじの締め付け作業の際に、経験的な知識だけに頼って安易に取り扱われているというのが現状です。その結果、特に自動車部品では、振動や温度変化などに関して過酷な条件で使用されるため、ねじの「ゆるみ」や「破壊」を原因とするトラブルは多く発生しています。

 このトラブルを解消するためには、経験則ではなく、ねじの基本や設計、取り扱う上での留意点を十分に理解した上で、原理・原則に即した対処をする必要があります。「技術者塾」の講座では、まず、ねじの本質や、本質を知らずに取り扱ったときの影響度を学びます。その上で、トラブル事例を題材とした演習を行い、実務に役立つようにします。

──ねじ締結の知識や技術は、今後ますます必要とされるようになるのでしょうか。

岡本氏:例えば、自動車部品。今後、ますます高性能化し、小型化の方向に進むことは間違いありません。すると、使用される部品は、より過酷な使用条件にさらされることが予想されます。こうした過酷な使用条件では、ねじの本質や設計、取り扱い留意点を、これまで以上にきちんと理解しなければ、トラブルに見舞われる機会が増えてしまいます。

──ねじ締結の知識や技術を学ぶ上でのキーポイントを教えてください。

岡本氏:まず、ねじはとてもシンプルな部品ですが、製品の品質に重大な影響を与え得る重要な部品であることを、不具合事例を通じて理解してもらいます。その上で、ねじの基礎と設計、取り扱い上の留意点や、ボルトや被締結体の材料特性から見るミクロな視点について学びます。座学だけでなく、演習を通じて習得することが大切です。

──技術者塾の講座では、どのようなポイントに力点を置いて説明しますか。

岡本氏:当日の講座の時間(6時間)内に、ねじを扱う際の設計上・取り扱い上の考え方をきちんと理解してもらうために、講師から一方的に講義するスタイルはとりません。講義の中で常に講師と受講者との間でやり取りを行い、受講者の考え方や理解度をチェックしながら研修を進めていきます。これにより、講座がより有意義な時間になるように努めます。

──想定する受講者はどのような方ですか。また、受講することでどのようなスキルを得られますか。

岡本氏:技術者塾の講座は、ねじやボルトの入門編と位置付けています。従って、これからねじを扱う若手技術者はもちろん、実務経験はあるけれど体系的に基礎を学び直したいと考えている技術者まで、幅広い人を対象としています。「自動車部品」と題していますが、これは自動車部品が振動や温度変化でより過酷な環境にあるからで、ねじを使うならどのような産業に属している人でも受講できます。

 受講効果としては、ねじに関する知識や締結のメカニズムといった基本から押さえ、ねじ締結の設計に関して大切なポイントを習得できます。加えて、グループ討議を含む演習により、理解を深めて実践力を高めることができます。こうして、ねじ締結に関するトラブルを解消します。