――今回、特に力点を置いて説明するポイントは。

 次世代の高性能電源を実現するために必要なノウハウを提供するのが、本セミナーのポイントです。(a)電源部品の数式を使った見える化、(b)電源製品に用いられている技術的な工夫、(c)スイッチング電源を高効率化・小型化するための回路技術、の3つから構成します。

(a)電源部品の数式を使った見える化

 新パワー半導体デバイス(SiC、GaN)の登場によって、スイッチング電源の動作周波数は1桁から2桁高くなることが予想されます。そのため、スイッチングデバイスのターンオン・ターンオフの詳細な動作を理解し、電圧・電流・寄生成分がどのように影響するのかを数式として把握しておくことがとても重要になってきます。また、磁気部品の設計においても、ヒステリシス損・うず損・残留損・近接効果・表皮効果・ストレ容量など、どういった成分がどのように影響するのかを数式で理解しておけば、有限要素法を用いたシミュレーターを使う前に、ある程度の設計指針を立てることができます。

(b)電源製品に用いられている技術的な工夫

 近年、通信機器用電源に用いられていた技術が自動車用途にも広がりを見せています。例えば、マツダの「i-ELOOP」やAudi「SQ7」の48Vシステムの電源にはパソコンのCPU用電源に用いられている多相式コンバーターやカップルド・インダクター・コンバーターの技術が応用されています。

 一方、自動車用電源は、その用途ならではの放熱技術や実装技術も施されています。蓄電部品の活用についても、日本ケミコンの電気二重層キャパシターや東芝のLiイオン電池(SCiB)の特徴や車の動作環境を総合的に考慮した最適設計が組まれて大変勉強になります。

 このセミナーでは、学会で発表された情報や電源技術者としての知見を交えながら自動車用電源に用いられている技術を解説します。また、現在注目を集めている小型ACアダプター(FINsix社のDARTやAvogyのZoltなど)の分解調査結果も紹介します。

(c)スイッチング電源を高効率化・小型化するための回路技術

 スイッチング電源の高効率化・小型化を実現するための様々な手法を解説していきます。コンデンサー分圧方式2相式コンバーター技術は、業界最高の電力密度を誇る電源として、最大10MHz(5MHz/phase)で動作可能なICが商品化されています。48Vハイブリッドシステム用に開発したZVS技術は、電力損失をハードスイッチングに比べて1/3に、電流臨界モードに比べて半減することに成功しています。その他にも、絶縁型コンバーターをMHz帯で動作させるための回路技術や磁気部品を小型化するための手法、さらにはGaNデバイスを高速駆動する手法、スイッチ素子を並列運転するための同期駆動技術など、大分大学において研究している様々な新しいスイッチング電源の小型高効率化技術を紹介いたします。