日産自動車が開発したデザインレビュー手法 「Quick DR」が注目を集めている。その理由は、開発期間が限られる中で、不具合の発生を効率よく未然に防止できることにある。「技術者塾」では「開発者から学ぶ 日産の不具合未然防止手法「Quick DR」」〔2017年3月3日(金)〕の講座を開催する。講師は、日産自動車においてQuick DRを開発し、導入推進した同社技術顧問の大島恵氏と同社車両品質推進部主管の奈良敢也氏。両氏がQuick DRとは何かを解説する(注:日経ものづくり2013年1月号解説「短期間で効果的に問題を発見・解決するQuick DRを始めよう」を再掲載)。
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ここまで日産自動車(以下、日産)においてQuick DRが生まれた背景と、その概要について紹介した。今回は、未然防止に有効なデザインレビュー(DR)を実現するために整備したQuick DRの標準ツールと実施上のポイントについて解説する。
前回紹介した通り、過去に発生した重大不具合の発生要因を分析した結果、「変更点/変化点を見逃してしまいデザインレビューを実施しなかったため」という理由が38.0%と最も多かった。これはデザインレビュー自体の問題ではなく、デザインレビューを適用する課題の選び方の問題である。
デザインレビューのプロセスやツールを完璧に整えても、デザインレビューを適用すべき課題を見逃してしまっては意味がない。一方、闇雲に全ての課題にデザインレビューを適用すれば、その準備に膨大な労力を費やすことになってしまい、効率的に品質向上を進めることはできないだろう。
つまり、デザインレビューを適用すべき課題を的確に選定することが重要であり、そのために開発したツールが「リスクアセスメント・シート」である(図7)。日産ではQuick DRを導入する際、設計の新規性によってデザインレビューの適用要否を判断することにした。そこで、各技術領域のエキスパートが新規性を判断するために必要な視点について徹底的に論議し、抽出した9つの視点をリスクアセスメント・シートに織り込んだ。