再発防止と未然防止

 このうち、前者の目標を達成するためには、不具合(故障率)や不満を継続的に改善していくプロセスが必要となる(図1)。市場から得られた情報から不具合/不満を本質的に改善し、標準化して設計に適用していくことで、過去に経験した不具合/不満の発生率を減少させられる。このような、同じ失敗を防ぐ取り組みが「再発防止型の継続的品質改善」である。

図1●設計領域における品質改善のキープロセス
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図1●設計領域における品質改善のキープロセス
市場において不具合や不満が発生しないように品質を継続的に改善していくプロセスとしては、「故障率の低減」「重大不具合の再発防止」「品質のばらつき抑制」といった再発防止型と、デザインレビューによって新たな問題の芽を摘む未然防止型の4つのキープロセスがある。

 しかし、再発防止型の改善だけでは十分な取り組みとはいえない。従来にない新しい製品を開発したり、造り方を変更したりすれば、新たな不具合/不満が発生する可能性がある。そのような不具合/不満を発生させる芽が製品に入り込んでしまうのを未然に防ぐことも必要だ。これが、「未然防止型の継続的品質改善」である。

 再発防止型の改善を進めつつ、新たな設計については未然防止型の品質改善を適用する。この両者が混同されている場合も少なくないが、実は再発防止型の改善を進めることは、より効率的かつ効果的な未然防止型の改善につながる。再発防止型の改善を進めることで、標準設計や標準部品、再発防止策、重要管理特性といった品質技術が蓄積され、設計標準へとつながる。こうすることで、未然防止型の改善で検討すべき項目を明確にすることができる。従って、両者を明確に分けて考えた方がよいのだ。

 再発防止型のプロセスとしては大きく3つある。ここでは詳しくは触れないが、対処療法的な対策にとどまらない「故障率の低減」、顧客への迷惑度や発生率が高い不具合の再発防止策を製品開発にフィードバックする「重大不具合の再発防止」、品質に対する顧客の期待値を下回らないように性能の中央値を高めたり、ばらつきを小さくしたりする「品質ばらつき抑制」だ。

 一方、未然防止型のプロセスでは、デザインレビューが大きな役割を担う。自動車業界のデザインレビューでは、FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)やFTA(Fault Tree Analysis)、DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)といった手法がよく用いられる。

 ところが、従来型のデザインレビューが未然防止策として十分に機能しているかどうかという点には疑問もあった。もし、デザインレビューを実施すること自体が目的になってしまえば、それは形骸化した活動に陥ってしまう。

─(2)へ続く─