自動車の自動運転に対する電機業界の関心が高まっている。自動運転の実現の鍵を握る重要な技術の1つがセンシングである。日経BP社は「実用化迫る、自動運転支援のためのセンシング技術」と題したセミナーを、技術者塾として2016年6月16日に開催する(詳細はこちら)。本講座で講師を務める金沢大学理工研究域 機械工学系 准教授の菅沼直樹氏に、自動運転支援のためのセンシング技術のポイントなどについて聞いた。(聞き手は、日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

――自動運転への関心が電機業界で高まっています。

金沢大学理工研究域 機械工学系 准教授の菅沼直樹氏
金沢大学理工研究域 機械工学系 准教授の菅沼直樹氏

 自動運転自動車では、通常ドライバーが行っている認知・判断・操作といった一連の動作を、センサーとコンピューターを用いて実現する必要があります。従来の自動車技術の中心は、主に自動車メーカーや関連サプライヤーが所有していた機械的技術や、その制御技術でした。一方、自動運転では、高度な情報技術が主たる重要な要素となります。

 この意味において、従来の自動車メーカー以外にも、半導体メーカ-やIT企業などが新たなビジネスチャンスを求めて、この分野への参入を加速させるでしょう。また、現在の自動運転技術では、高精度地図を活用するものがほとんどであることから、地図メーカーや測量機器メーカーといった分野の企業の存在感が一層高まると考えられます。

 さらに、自動運転自動車は、従来の個人所有型の自動車だけでなく、カーシェアリングや公共交通機関への応用など様々な活用が見込まれています。これらを目指した様々な実証実験も世界各国で始まるでしょう。

――自動運転の技術は現在、どこまで進んでいるのでしょうか。また、実用化に向けた課題は。

 自動で走行する自動車が確実に状況判断を行うためには、オンボードセンサーによる走行環境の認識が必要になります。オンボードセンサーによる認識では、障害物検出と走行可能空間や死角領域の抽出、自動車・歩行者といった物体種別の識別、移動物体の運動推定とその軌道予測といった技術が求められます。また、地図を活用した自動運転では、車の位置を正確かつロバストに(外部環境に左右されることなく)推定する手法も必要になります。

 現在までに、ある程度の条件下であれば、自動運転が可能であるシステムが開発されてきてはいますが。しかし、今後の市販化に向けては、悪天候下の様々な環境への対応など、様々な技術課題を克服していく必要があります。