QAネットワークの進め方

──QAネットワークを使って不良撲滅対策をどのように進めるのでしょうか。

皆川氏: QAネットワークでは、発生防止レベルを横軸に、流出防止レベルを縦軸に取ったマトリクスを使います。発生防止レベルも流出防止レベルも4段階。従って、マスが4×4=16個のマトリクスとなります。各マスは、A~Fのランクがのようにあらかじめ決まっています。A~Fの評価の中身は以下の通りです。

A:最重要品質保証項目の目標レベル
B:重要品質保証項目の目標レベル
C:一般項目の目標レベル
D~F:不可

図●QAネットワークで使うマトリクス
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図●QAネットワークで使うマトリクス
発生防止レベルを横軸に、流出防止レベルを縦軸に取っている。このマトリクスを使って不良撲滅対策を進める。

 このマトリクスを使い、製品の品質として押さえるべき全ての項目(例えば、寸法精度や形状精度、表面荒さといった製品の品質を左右する項目)について評価を行っていきます。生産ライン全体の中で、各項目について不良品の「発生防止工程」がどこか、そして、その「発生防止レベル」がどれくらいかを調べます。同じく、「流出防止工程」がどこか、「流出防止レベル」がどれくらいかについても調査します。

 例えば、30個の工程から成る生産ラインとし、車載用金属製品を造っているとしましょう。ここで、不良品にならないように、きちんと押さえるべき品質保証項目として「寸法精度」を取り上げるとします。

 この場合、まず、寸法精度の不具合を生み出し得る工程を「発生防止工程」として探します。例えばそれが6番目にある「切削工程」であると突き止めたら、次にその工程における「発生防止レベル」を4段階で調べます。具体的には次の①~④のうち、相当するものを選ぶのです。

①不良が発生しない
②設備や治具を使って異常を検知する
③作業標準に従って作業する
④管理できていない

 続いて、寸法精度の不具合を外に出し得る責任を負う工程を「流出防止工程」として調べます。例えば、15番目の「(寸法の)検査工程」であると分かったら、次にその工程における「流出防止レベル」を4段階で調べます。次の①~④の中から、当てはまるものを選びます(注:図では数字を◇で囲んだ)。

①不良が流出しない
②設備や治具を使って異常を検知する
③官能検査(目視検査など)を行っている
④作業標準書がない

 こうして「発生防止レベル」と「流出防止レベル」を求めたら、QAネットワークのマトリクスの該当するマスに丸(図の赤色の「○」)を付けます。例えば、「発生防止レベルが②」、「流出防止レベルが③」であれば、マトリクスの2列目×3行目のマスに「○」を付けます。すると、そこは「C」ランク、すなわち「一般項目の目標レベル」となります。

 ただし、Cランクという評価が一概に不可というわけではありません。それは、品質保証項目によるのです。例えば、ここで調べた寸法精度の要求レベルが一般的な水準で構わないのであれば、Cランクであっても合格です。これに対し、例えば重要な保安部品(安全のために搭載が法令で義務づけられている部品)の寸法精度のように、厳しい水準が求められる部品であれば「A」ランク、すなわち「最重要品質保証項目の目標レベル」にしなければなりません。他にも、排気指定品や走行機能指定品などの品質保証項目がAランクに相当します。

 つまり、この寸法精度の評価では一般的な部品なら合格ですが、ブレーキ部品のような重要保安部品であれば不合格。Aランクを目標レベルに設定し、CランクからAランクに引き上げるように発生防止工程と流出防止工程を改善しなければなりません。重要保安部品はAと決まっていますが、その他の部品のA~Cの目標ランクは自分たちで設定します。

 QAネットワークでは、こうした調査・評価を全ての品質保証項目に関して行うのです。