──従来のFMEAでもDRを実施してきたのではありませんか。

皆川氏:従来のFMEAでは、なぜその設計にしたのかに関する議論がありませんでした。従来のFMEAのワークシートは主に製造に関する品質管理をまとめたもので、設計について議論するワークシートにはなっていなかったからです。

 従来のFMEAは、「影響度(不具合が起きたときにどれくらいの影響があるか)」「発生度(不具合が起きる確率)」「検出度(その不具合をどこで検出できるか)」の3つを掛け合わせて「重要度(影響度×発生度×検出度)」を計算します。そして、その数値に応じて工場の品質管理に関する検査を変えていました。例えば、数値が特に大きければ「全数検査を実施する」といった具合に対策します。

 つまり、従来のFMEAには「どのように設計したか」について記載する箇所がありませんでした。そのため、設計に関して議論することができず、その設計で本当に良いかどうか、すなわち品質不具合を未然に防げるか否かを検討することができなかったのです。

 確かに、従来のFMEAのワークシートを使ってDRを実施している企業もありました。ただし、大抵の場合、設計者が思いついたことだけを取り上げることが多かった。先の例で言えば、噴射圧力が100MPaの話だけで、他の点は話題に載らない。材料は? 熱処理は? 表面処理は?──といった、他の部門の専門的視点も反映されません。これでは品質不具合を防ぐ上で本来は改善すべき設計箇所に「抜け(検討漏れ)」がたくさん生じてしまいます。結果、客先や市場で品質トラブルを起こしてしまうリスクが高まるのです。

 設計に関するこうした検討漏れの危険性をなくし、必要項目の全てについて議論する方法として考え出されたのがDRBFMなのです。こう説明すれば、設計の根拠について議論するためのワークシートになっているという意味が、よく理解できると思います。