ユニットモジュールの第1号づくりから開始

──いすゞ自動車でモジュラーデザインをどのように進めていったのですか。

佐藤氏:私が考えたモジュラーデザインは、最適設計を施したベース(基本)モジュールに、レンジ設計を加えるというものです。こうして得られた部品モジュールを組み合わせることで、ユニットモジュール(複数の部品から成る自動車部品や製品のこと)を組み上げるのです。

 とはいえ、考えを伝えるだけで設計者が動いてくれるほど甘くはありません。やはり、論より証拠。私は設計者と一緒にユニットモジュールの第1号を作りました。これを設計部門に提示し、「このように進めないと部品数は減らないぞ」と伝えたのです。

 作ったユニットモジュールは、エンジンオイルの量を測る「オイルレベルゲージ」です。モジュラーデザインに着手する前、このオイルレベルゲージは図番ベースで682種類もありました。オイルレベルゲージはオイルを測れるだけでよいので、ここまで種類をそろえる必要はありません。そこで私は、オイルレベルゲージを[1]グリップと[2]サーベル(長さ)、[3]検知部、の3つに分割。その上で、グリップは丈夫で生産性がよいものを1つだけ設計し、50種類の長さのサーベルと、18種類の長さの検知部を部品モジュールとして用意しました。

 そして、これらの設計を「最適設計」と名付けました。こう名付ければ、設計を変えようとは簡単に言い出せないと考えたからです。ただし、設計変更を絶対に認めないというわけではありません。付加価値の高い新たな設計を排除するためではないからです。もっと良い設計アイデアが生まれたときに、モデルチェンジすればよいという発想でした。これに勝る生産性も含めた最適設計は当時考えられませんでした。

 サーベルと検知部の組み合わせは単純に50×18とはなりません。成立する組み合わせに条件がある上に、車種のラインアップの制約もあるからです。結局、144種類で従来のバリエーションを吸収することができました。こうしてオイルレベルゲージの部品モジュールを完成させ、これがいすゞ自動車の部品モジュールの第1号となりました。

 最適化設計を施した部品モジュールを作り、それらの組み合わせでユニットモジュール化する。そして、それらを組み合わせてモジュラーデザインに発展させる。この考えを具現化して設計者に「ひな形」として提示したからこそ、モジュラーデザインを実践できたのだと考えています。