必要な一連の基礎知識をカバー

──技術者塾の講座はどのように進むのでしょうか。

両氏:まず、これからの機械系技術者に必要な電子素子や電子回路の基本を一通り学びます。続いて、「動くシステム」に組み込む電子回路の代表として、モーターの制御回路と駆動回路について学びます。この後、電気・電子回路の書き方とプリント基板の作成方法を学びます。回路図の書き方を知ることにより、何の電子回路かを理解することができます。

 次に、シミュレーションについて学びます。電子回路がどのように動くかをコンピューター上で検証するのです。使うのは、電子回路のシミュレーションソフトウエアである「LTspice」。無料で使えるフリーウエアで、工学部の学生からプロの電子回路設計者まで使われているソフトです。実際、日本企業の開発環境で現在、急速に普及が進んでいます。

 無料であることに加えて、充実したライブラリーが魅力の1つです。LCR素子から能動素子、受動素子まで、多くの電子素子がそろっているという特徴があります。例えば、大容量コンデンサーは電気容量が同じでも、耐電圧、電流実効値、等価直列抵抗やインダクタンス、等価並列抵抗や容量などが異なります。これらがライブラリーに用意されているのです。従って、例えば電解コンデンサ-とタンタルコンデンサー、マイラーコンデンサー(フィルムコンデンサー)という選択肢の中から、どれが目的とする電子回路にふさわしいかをシミュレーションにより最適化することができるのです。

 加えて、ノード数が無制限であるため、大規模な電子回路でもシミュレーションが可能であることも、普及に弾みを与えています。

 講座では、フィルター回路やAND回路などのシミュレーションを実演します。このうち、フィルター回路はノイズを除去する電子回路です。例えば、センサーに載るノイズを除去するために使います。ノイズとなる余分な周波数を取り除き、必要な領域の周波数を取り出すのがフィルター回路です。シミュレーションでは、どのような電子素子を入れたら、どれくらいのノイズを除去できるかを検証します。ここまでを充実したテキスト(パワーポイント)を使いながら、講師が分かりやすく説明します。