経営共創基盤ものづくり戦略カンパニーマネジャーの古澤利成氏
経営共創基盤ものづくり戦略カンパニーマネジャーの古澤利成氏
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 製造業の世界展開が当たり前になる中で、「グローバル開発購買」の重要性が叫ばれている。「技術者塾」では「これでうまくいく「グローバル開発購買」」〔2016年7月1日(金)〕の講座を開講する。講師の1人である、経営共創基盤ものづくり戦略カンパニーマネジャーの古澤利成氏に、グローバル開発購買の進め方などを聞いた。(聞き手は近岡 裕)


──いまや日本の製造業にとってグローバル展開は当たり前です。ところが今、海外において開発購買の重要性が指摘されています。日本企業に何が起きているのでしょうか。

古澤氏:開発・設計段階から調達コストをつくりこむ活動である「開発購買」の重要性が日本企業の中で増しています。中でも、設計・生産のグローバル化が加速する中で、「グローバル開発購買」の重みは増す一方です。世界のトップメーカーは優れたグルーバル開発購買活動を遂行しているのですが、実は日本企業では苦手としているところが少なくありません。


──なぜ苦手とする日本企業が多いのでしょうか。

古澤氏:原因を探っていくと、現場視点でも経営視点でも、コミュニケーションがグローバルでうまくとれていないことが挙げられます。現場視点では、せっかくコスト改善のアイデアは抽出されているのに、実行し切れていないケースが目立ちます。その結果、グローバルにおいてコストのつくりこみを十分にできていないのです。

 例えば、日本にいる技術者がコスト削減のアイデアを持っているとする。それを基に海外のサプライヤーと交渉するとします。交渉するのは、海外現地法人の調達部門。彼らは伝えられたアイデアをベースに調達品の価格交渉をすることになります。ところが、開発設計段階の限られた時間内で日本の技術者と海外の調達部門がコミュニケーションするには、とても時間が足りない。この間にサプライヤーに対して技術評価もしなければなりませんが、日程管理を含めてグローバル開発購買における管理調整はとても大変です。国内で完結させる場合の比ではありません。

 さらに企業間取引(B to B)の場合は、海外の営業部門が顧客に対して仕様変更の承認をとる必要もあります。この条件もクリアした上で、海外の調達部門は量産前にサプライヤーと価格交渉をして単価を勝ち取らなければならないのです。

 要は、グローバルをまたいだ開発設計部門と調達部門、営業部門が、限られた時間内でうまくコミュニケーションすることは難しい。そのため、開発設計部門が考えたコスト削減のアイデアが製品になかなか反映されないのです。

 日本ではできる。それは、「あうんの呼吸」が通用するからです。しかし、海外とのやりとりにおいて、あうんの呼吸は通じません。